東京二期会オペラ劇場
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運動会での超定番音楽でもあるフレンチ・カンカンの音楽、《地獄のギャロップ》で知られるこのオペレッタの舞台を見るのは今日が始めてである。四月に毛皮族のメンバーによる『天国と地獄』を見ているが、あの作品には非常に大きなアレンジが加えられていて、いわゆる『天国と地獄』とは別物と考えるべきだろう。とはいうもの、今日の舞台を見て、四月の毛皮族版『天国と地獄』の翻案の巧みさに改めて気づいたのだが(町田マリーのユーリディス役は本当にぴったりはまっていたように思う)。
高い歌唱技術を持つオペラ歌手による歌声の響きを堪能しつつも、僕は演劇的な視点でこの作品を観て楽しんだ。全編日本語による上演だった。台詞には日常語的なことばを巧みに取り入れられており、歌詞も音楽にうまく乗っかっていたように思う。音楽の軽やかさと調和した日本語の感覚が新鮮だった。「オルフェウス」神話に、一九世紀後半のパリのブルジョワ夫婦の風俗を取り入れて、パロディ化し、こんなに馬鹿馬鹿しく陽気な作品にしたてるセンスは本当に素晴らしい。またこういった作品を楽しむことができた当時の観客層のレベルの高さもたいしたものだと思う。一旦幕が下りた後、再びフレンチカンカンでのフィナーレは常套的なやり方なのだろうが、観客席を高揚させる効果的な仕掛けだった。