閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ボルベール〈帰郷〉

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VOLVER

ペドロ・アルモドバル作品を見るのは今回はじめてだった。昨年公開されて方々で高く評価されていて、気になっていた作品である。
過去に男性によって被った大きな心の傷を乗り越え、たくましくしたたかに生きていく女性の話。一見瑣末的だがしっかりと提示された伏線や不自然に思えた登場人物の行動が、きっちりと説明され、回収されていく手際のみごとさに引き込まれる。こうしたしっかりと展開が構築された作品には感心することはあっても、その技巧性ゆえに白けた気分に陥ることが多いのだけれど、この作品が好きなのは、作者は主要な登場人物であるおんなたちのたくましさに深い共感を示しつつも、彼女たちの自己保身のためのエゴイズムや弱さなどもきっちりと描き出しているからだと思う。もちろん強烈な印象を残す濃厚美貌の主演女優のペネロペ・クルスはこの映画の大きな魅力の一つであるのだけれども。