閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ジゼルと粋な子供たち Des enfants de coeur

劇団NLT公演 No.132
http://www.nlt.co.jp/

  • 作:フランソワ・カンポ François Campaux
  • 演出:グレッグ・デール Greg Dale
  • 訳:和田誠
  • 美術:皿田圭作
  • 照明:古宮俊昭
  • 音響:小林史
  • 衣裳:伊藤早苗
  • 出演:一色彩子(客演)、川端槙二、木村有里、杉山美穂子、佐藤まり、緒方絵理、平井智美、桑原一明
  • 劇場:新橋 博品館劇場
  • 満足度:☆☆☆☆
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パリのブルジョア階級の社会を舞台に、恋愛関係のもつれから生じる騒動を軽妙に描き出すブールバール喜劇の典型的作品。パリの高級アパート、とある愛人宅が舞台。そこに「旦那」がやってきて妻との離婚し、愛人と新生活をはじめることを宣言する。自由気ままな生活になじんでいた愛人は突然の事態の変化にとまどう。しばらくすると呼び鈴がなる。この日の夜、この愛人宅に旦那の子供や子供の恋人、正妻、正妻の母などが次々と押しかけ、新しい生活の出鼻がくじかれる。愛人役の客演、一色彩子のすらっとした立ち姿、優雅な美しさが印象的。
翻訳や演出の古くささと類型性に最初とまどいを感じるが、次第に気にならなくなった。むしろブールバール劇のようなある種の型が明確な作品では、翻訳や演出も型をしっかりと設定したほうが芝居ののりや雰囲気は伝えやすいメリットがあることがわかる。パリのブルジョア向けの大衆演劇ではあるが、最近は勢いが衰えたとは言え、一九世紀以来の歴史を経て、ブールバール劇はある種の伝統芸能ともいえるような独自の表現上の洗練を獲得しているように思える。
多彩な登場人物の類型を巧みにかき分け、パターン化した展開をどんどんエスカレートさせていく喜劇的スタイルが効果的に決まっていて、2時間の上演時間、退屈することはなかった。
下ネタや人種差別ネタが無頓着に、大量に用いられているのはぎょっとする。演出のやり方次第では、マクドナーなどロンドンで人気の「in-ya-face-theatre」のような攻撃的な黒い笑いの作品になってしまいそうな感じである。しかし全体に軽妙な明るさの中でそうした毒を拡散させていくことこそがブールバール劇の胆であるように思えた。
テンポのよい楽しい作品だった。