閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレ (講談社文庫)

グランド・フィナーレ (講談社文庫)


評価:☆☆☆☆

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地域図書館の返却棚にあったのを何となく借りる。表題作「グランド・フィナーレ」が芥川賞受賞作。他に短編三篇を収録。
表題作は電子媒体に大量に保存していた少女写真が妻に発見されたため離婚となったロリコン男の語りによる小説。この趣味と実益をかねたロリコン性癖のために彼は溺愛する娘とも会うことができなくなってしまう。小学校低学年の娘も彼の趣味の犠牲者だったのだけれど。
離婚後彼は両親の住む田舎に戻り、そこでぶらぶらと暇人生活を送る。その田舎町で彼は小学六年生の双生児のように仲の良い少女二人と芝居を作ることになる。
僕が最も愛する小説の一つである坂口安吾の初期小説、「黒谷村」を連想させるファルス的小説。主人公の内面のとらえどころのなさ、手応えのナサが、奇妙にリアリティーがある。彼の行動や思っていること、彼の周囲の人間の言動ははかなり細々と書き込まれているにもかかわらず、作品の主題はそこからは手の届かないところにあるような隔靴掻痒感がある。
併収録の3つの短編はさらにファルス的で実験的。でどう読んだものかよくわからない。