閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

タンゴにのせて Sur un air de tango

パニック・シアター公演 Vol.19
http://www.k-kikaku1996.com/work/panic/panictheatre-01.html

  • 作:イザベル・ドゥ・トレド
  • 訳・演出:中村まり子
  • 美術:皿田圭作
  • 照明:日高勝彦
  • 出演:田村連(ザ・スーパーカムパニイ)、川辺久造(文学座)、中村まり子
  • 上演時間:1時間40分
  • 劇場:下北沢 小劇場 楽園
  • 満足度:☆☆☆
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いくつかの賞を獲得したフランスの現代作家の戯曲の上演ということで見に行った。女優中村まり子を中心にプロデュース形式で公演を行っているパニック・シアターは継続的にフランスの現代作家の戯曲を取り上げているユニットだが、僕は今回が初見だった。
あまり期待せずに行ったのだが、作品、演出とも僕の嗜好からは外れたつまらない公演だった。

ブルターニュの海岸地方にあるありふれたカフェが舞台。実直なカフェの店主であるピエール、妻アリスとの間に離婚問題を抱えている。アリスが実直だが退屈な男であるピエールを捨てて、他の男のもとに走ったのだ。ピエールの父、マックスがカフェを訪問する。何年か前に妻に先立たれ一人暮らしをしている。実直なピエールと異なり、ダンス好きの父はお調子者で享楽的。顔を合わせるとこの父子は諍いを始めるのだが、決して仲の悪い親子ではない。ピエールの離婚問題を知り、父は心を痛める。ただし父は不貞を働いたアリスに対しても同情的である。

家族関係の崩壊を描いた芝居は腐るほどある。出来の悪い脚本というわけではないけれど、新味に乏しい平凡な脚本だと思った。ブルターニュにある寂れたカフェという場所の設定や「タンゴにのせて」というタイトルが物語の展開にからんでこないのも物足りない。敢てフランス語から訳してまで、東京で上演する価値のある戯曲なのか疑問に思った。展開もだらだらとしていてめりはりに乏しい。

感情表現などがオーバーアクションや発話の調子で強調される、いわゆる新劇風の芝居がかった演技も古くさく感じられ、僕は受け入れがたかった。ピエール役がなぜかちょっとおねえ言葉になる。なんでだろう。
訳もいかにも翻訳劇調の不自然なところが気になった。


こういったタイプの家族劇の翻訳ものとなると、せめて昨年見た加藤健一事務所の『モスクワからの退却』ぐらいの緻密な台詞と演出の洗練が欲しい。