閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

http://d.hatena.ne.jp/camin/20081007

劇場公開時に見損ねていたキム・ギドク作品。薄灰色の洋上に浮かぶぼろ舟から出ることなく、6歳のときから10年間過ごしてきた少女とその少女を監禁していた老人の恋愛譚。老人は少女が17歳の誕生日をむかえたときに、少女と結婚することを夢見ている。ひっそりとし、世間から隔絶された二人の楽園は、その結婚を目前にした時期に、少女の自我の芽生えによって崩壊の危機にさらされる。極度に人工的な状況のなかで展開するプラトニックで清純だが、強烈にエロチックな幻想に満ちた作品だった。
ギドクの映画はしばしば痛々しすぎて見るのがつらい作品があるのだが、この作品は痛切な悲劇を予感させつつも、結末は残酷なものでなくてほっとした。ギドクの作品のなかではもっとも好きな作品の一つとなった。