閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

サンプル『伝記』

sample 04
http://www.komaba-agora.com/line_up/2009_01/sample.html

  • 作・演出:松井 周
  • 出演:辻 美奈子、古舘寛治 (以上 サンプル・青年団)、羽場睦子、申 瑞季(青年団)、中村真生(青年団)、石澤彩美、吉田 亮、三橋良平(乞局)、金子岳憲(ハイバイ)、黒田大輔(THE SHAMPOO HAT
  • 舞台美術:杉山 至+鴉屋
  • 照明:西本 彩
  • 衣装:小松 陽佳留(une chrysantheme)
  • 劇場:こまばアゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆★
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僕にとっての松井周作・演出作品の頂点は、いまのところ2007年の『シフト』、『カロリーの消費』である。
変態性に対する嗜好を悪趣味なユーモアで表現するセンスは秀逸だと思うのだけれど、彼の作品はよい意味でも悪い意味でも自閉的であり、この後の作品では表現としての広がりの可能性が見えてこないのに不満を覚える。
ある奇人の『伝記』が、彼をとりまくエキセントリックな人間たちによって再構成される過程を演劇的にみせることで、その人間像がグロテスクな戯画へと変貌していくという着想はユニークでとても面白いと持った。しかしその中で提示されるパーツの変態趣味には、表現としては洗練されているのだけれど、ある種のマンネリズムを感じてしまう。「うーん、またこんなかんじか」といった印象を持つ。

あの黒い諧謔性はぼくの好みだし、作者は自分の好きな世界を存分に表現しているのだろうけれど、あの閉じた感じにはせっかくの才能を「趣味」のなかに収斂させてしまっているようなもったいないなさを感じる。