閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

昔の女

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000064_play.html

  • 作:ローラント・シンメルプフェニヒ
  • 翻訳:大塚 直
  • 演出:倉持 裕
  • 美術:中根聡子
  • 照明:小笠原純
  • 音響:上田好生
  • 衣裳:太田雅公
  • ヘアメイク:川端富生
  • 演出助手:山田美紀
  • 舞台監督:北条 孝
  • 出演:松重 豊、七瀬なつみ、日下部そう、ちすん、西田尚美
  • 上演時間:95分
  • 劇場:初台 新国立劇場 小劇場
  • 評価:☆☆☆☆★
                                                                                                    • -

1967年生のまだ若い作家であるがローラント・シンメルプフェニヒは現在のドイツを代表する劇作家の一人だとのこと。

ペンギンズバイブルの倉持裕の舞台はこれまで見たことがなかった。女優が三人出ているが三人ともとても可愛らしい人ばかり。若い女優のちすんは今回はじめて知ったのだけれど、本当にキレイで愛らしい顔立ちの女優だと思う。
パラレル・ワールド的発想がプロットのなかで効果的に用いられた不条理ホラーといった趣の作品だった。面白かった。

引越準備をしていた両親と思春期の息子の三人家族の家に、唐突に夫の24年前の恋人が訪問するというのが物語の発端となる。3分前、5分後、25 分後、10時間前といったぐあいに、細く異なる時間の場面がテープを巻き戻したり、早送りしたりするかのように前後して演じられ、同じ場面が何回か反復される。しかし繰り返される場面は、忠実に反復されるわけではない。同じ場面は繰り返される度ごとに微妙に変化が加えられて行くのだ。パラレル・ワールドである。進行するにつれて徐々にずれていく世界。時間が行きつ戻りつしながら、三人家族は一歩一歩カタストロフィックな道筋を進んで行く。

演技演出はリアリズムというよりは、記号的な演技が選択されていた。七瀬なつみの動きとしゃべりかたがとても可愛らしい。一家は繰り人形のように災厄にずるずると引きずり込まれる。演技のリズムがとてもよい。定型的な役者の動きの指示であるとか、台詞の間が丁寧に演出されていて、劇行為はむしろ喜劇的雰囲気のなかで進んで行く。結末は陰惨なのだけれど、ドライな雰囲気のなかで軽やかに進行させる演出手腕は優れたものだと思った。