閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シュート・ザ・クロウ

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000065_play.html

  • 作:オーウェン・マカファーティー
  • 翻訳:浦辺千鶴、小田島恒志
  • 演出:田村孝裕
  • 美術・衣装:伊藤雅子
  • 照明:中川隆一
  • 音響:加藤温
  • 出演:板尾創路、柄本 佑、阿南健治、平田 満
  • 劇場:初台 新国立劇場小劇場
  • 評価:☆☆☆
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北アイルランドというと独立をめぐるテロやプロテスタント系とカトリック系の住民の対立が思い浮かぶが、この戯曲ではそうした問題はまったく言及されない。
ベルファスト市内の作業現場でひたすらタイル張りをする世代の異なる四人の職人の一日が脱力的なユーモアとともに描き出される。彼らの単調な仕事が人生の倦怠や退屈を象徴している。チェーホフの「ワーニャおじさん」や「三人姉妹」で扱われる主題が、北アイルランドの労働者によって変奏されているように僕には感じられた。

演出のねらいがあいまいで焦点のぼやけた芝居になっていた。演出家の解釈が役者にしっかりと伝わっていないような気がした。役者はそれぞれがばらばらに、自分の勝手な解釈に基づいて演技をしている感じ。しかし四人の演者のうち、まがりなりにも説得力のある人物造形に達していたのは平田満だけだったように僕には見えた。板尾創路の個性も生かされていない。芒洋としたせりふ回しが浮き上がっていた。阿南健治は板尾とは逆にうるさすぎる芝居で浮き上がる。アンサンブルの感じられないぼやけた感じの芝居だった。