閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

少年B

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妄想と願望と、そして情けないほどみじめでかっこ悪い現実が共存していた14歳のころの、思い出すともだえ苦しみ、のた打ち回りたくなるほど滑稽で無様な自分のすがたが演劇的に再現される。その表現のあまりの巧さに、今回は見ながらずっと違和感を覚えていた。平凡でありきたりな日常が、いつもどおり周到に計算された柴的演出で、うまい役者によって、あまりにもそつなく、見事に再現されてしまっていること、ちょっと鼻白んでしまう。何度か爆笑しつつもこの違和感は最後のほうまでうずきのように感じ続けていた。
でも最後の場面でフラストレーションが一気に解放されてしまう。せりふのひとつひとつが、さえない40男である自分に対するエールのように思われて、強力なカタルシスを感じてしまった。思わずどばっと涙があふれそうになる。劇場内の他人の前では号泣できないのでハンカチを取り出してシクシクと泣いた。
音楽の力をうまく利用したあの仕掛けはちょっとずるい感じもする。演出家にまんまと反応をコントロールされてしまったような感覚もあって、ちょっと悔しい気分になった。