閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シネマ歌舞伎特別編『牡丹亭』

http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/botantei/index.html

  • 出演:坂東玉三郎
  • 映画館:東銀座 東劇
  • 評価:☆☆☆☆
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歌舞伎座の昼公演終了後、小走りで東劇に行き、シネマ歌舞伎特別編『牡丹亭』を観る。この三月に玉三郎昆劇の名作『牡丹亭』を本場、蘇州で公演している。その公演までの過程を追ったドキュメンタリーと公演映像の二本立て。玉三郎の『牡丹亭』は昨年、京都と北京でもすでに上演されていて大きな話題となった。予告編映像とチラシの写真を見て、見に行こうと決めていた。
昆劇は中国各地に残る伝統演劇のなかでも最も古いものの一つだと言う。『牡丹亭』を見る限り、音楽や化粧は京劇風に感じられるところがあるが、京劇のようなアクロバティックで激しい動きはない。歌唱舞踊劇で役者は踊りながら歌う。動きは優雅で滑らか。
玉三郎は歌舞伎の女形として、昆劇の作品のなかに身を置き、歌舞伎と昆劇アマルガムを作り出そうとしたわけではない。昆劇では文革のころに女形の伝統が途切れたのだが、玉三郎は歌舞伎女形としての経験と実績を生かしつつも、歌舞伎の作法を導入するのではなく、あくまで昆劇の役者として作品を作ることによって昆劇における女形の伝統復活の可能性を探ろうとしているのだ。言葉もオリジナル脚本の言語、蘇州の古語を使うという徹底ぶり。齢50を超え、ありあまる名声を獲得しながらも、恐るべき労力と時間を費やすことになるこうした挑戦を行うのだ。凄い。

この挑戦の軌跡を記録したドキュメンタリーのほうが僕は面白かった。『牡丹亭』本編は、優雅で美しい作品ではあるのだけれども、始終流れ続けるたりらたりらした中国音楽の調べに誘われて眠ってしまう。京劇のような派手なアクロバットがあるわけでもないし。作品自体も主人公の姫が見る「夢」が話の核なので、眠ってしまうのもしかたないか。