閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ディア・ドクター

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『ゆれる』の西川美和監督の新作で評判もよいようなので期待して見に行った。佳作ではあるけれども『ゆれる』よりはだいぶ落ちるなあというのが僕の感想。
登場人物の心理の微細なゆらぎを丁寧に表現する演出は一級品だ。しかし物語の根幹をなす設定に、手塚治虫の『ブラック・ジャック』の中の一挿話をすぐに連想してしまい、その仕掛けがこちらの予測をまったく裏切らないかたちで機能しているひねりのなさにちょっと興ざめしてしまった。作品の主題は、田舎の診療所で働くこの医師がかかえる謎の向こう側にあるものを表現することに重点が置かれていたのではあるが。
的確で精密な演出にしっかりと答える役者たちの技による深みのある人物造型や物語の背景にある暖かい膨らみは十分に堪能し、楽しんでみることはできたけれども、お話自体は予定調和を感じさせ若干物足りなさを感じた。