閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

美代子阿佐ヶ谷気分

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  • メディア:映画
  • 上映時間:86分
  • 初公開年月:2009/07/04
  • 監督:坪田義史
  • 原作:安部愼一
  • 脚本:福田真作、坪田義史
  • 撮影監督:山崎大輔
  • 撮影:与那覇政之
  • 編集:白尾一博、坪田義史
  • 主題歌:SPARTA LOCALS『水のようだ』
  • 照明:高橋拓
  • 出演:水橋研二、町田マリー、本多章一、松浦祐也、あんじ、佐野史郎
  • 映画館:渋谷 シアター・イメージフォーラム
  • 評価:☆☆☆☆★
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たるい展開と自己陶酔的で過剰な叙情性に最初のうち少しいらいらする。くすんだ色のレトロ感覚に満ちた映像美は洗練されているけれど、ずいぶん独りよがりな映画だなと思ってみていたのだけれど、次第にとその世界にひきこまれてしまった。じんわりとした余韻にぼおっとなる。

70年代に『ガロ』で活躍した漫画家、安部慎一が恋人、そして妻となった女性、美代子との性的日常を描いた私小説的漫画を映画化したもの。
町田マリーのおっぱいが見られるということで見に行ったのだが、彼女の裸体の魅力は存分に堪能できる作品だ。その裸体、その容貌、その仕草は強烈にエロチックであると同時にノスタルジックでもある。孤独で、貧しく、不安でいっぱいの若い恋人たちが抱え持つ倦怠の寓意であるかのような裸体だった。男の身勝手きわまりない幻想と欲望を、驚異的な包容力でその裸体は受け止め、どんどんその存在感を増していく。二人の関係が奇跡のような均衡を保っていた数年間に、漫画家は彼女を糧に切なく美しい作品を何編か書き残す。
倦怠した青春の風景が擬人化されたかのような町田マリーの存在感が圧倒的だ。素晴らしい。
70年代の極私的な恋愛風景が、幅広い年代の人間が共有する普遍性のある青春の原風景となっている。