閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

パントマイム&クラウン 道化師のコンサート

http://www.hanmime.com/index_hanmime_kouen.html

  • 構成・演出:あらい汎
  • 出演:小西洋輝、井川ちなみ;チカパン(ゲスト)
  • 評価:☆☆☆★
  • 劇場:氷川台 スタジオP.A.C
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汎マイム工房のパントマイム&クラウンのステージ。
3人の演者で、それぞれの持ち時間が30分、15分、30分。最初の二つが汎マイム工房所属のマイムの演技、最後の30分が僕がここ数ヶ月追っかけている女性のマイム大道芸人、チカパンの持ち時間だった。

素人目にもかなりはっきりとわかる演技技術が用いられていること、それを使って表現される世界が素朴であることが要因なのだろうか、パントマイム芸というのは演芸として「面白い」と「面白くない」に観劇の印象がはっきりと二分されてしまうような感じがある。率直に書くと、汎マイム工房の二人の若い芸人の芸は僕にとっては面白いものではなかった。一人目のマイムは一生懸命に誠実に演じているのは伝わったきたけれど、洗練された動きのジェスチャー・ゲームを延々と見せられているような感じがした。観客として僕は個々の技芸の完成度にはそれほど関心がない。身体の動きと表情、そして音楽という簡素な仕掛けの制約のなかで、こちらの想像力の引き出しを開くような自由で豊かな物語を、パントマイムに期待しているような気がする。そしてこちらの想像力をひっぱり出すには、もっと厚かましく大胆な仕掛けが演者には必要であるようにも思う。
2番目は「音」に対する過敏な反応のバリエーションを発展させたパントマイムだった。悪くない。思わず笑ってしまった場面もいくつかあった。でも展開の推進力があと一つ、二つ決定的に足りない気がする。途中で向こう側の世界を追っかける気がなくなってしまった。

一人芸であるパントマイムには、狡猾さであざとさ、高度な戦略性が不可欠であるように思う。とにかく観客を無理矢理引き込んでしまう仕掛けが欲しい。芸というものに誠実に向き合っているかもしれぬが、あまりにナイーブな前二者の芸に対し、ベテランの芸人のチカパンはやはりやり手婆の手管を持っている。いくつものかぶり物をつかって、複数のキャラクターを演じ分けるコミカルなパフォーマンスだった。大道芸でやっているものを舞台用に整理して構成したものである。そこで演じ分けられるキャラクターの喜劇性、観客の予測を裏切る突飛さ、表現手段の豊かさ、観客参加の要素の効果的導入、そして音楽の選曲のよさ。やはりチカパンの芸は格段に素晴らしい。彼女の登場で客席の温度が2,3度上昇したかのように感じられた。