劇団AUN
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- 作:シェイクスピア
- 訳:小田島雄志
- 演出:吉田鋼太郎
- 照明:原田保
- 音楽:笠松泰洋
- 音響:角張正雄
- 出演:吉田鋼太郎、安寿ミラ、大塚明夫、ほか
- 劇場:東池袋 サンシャイン劇場
- 上演時間:三時間(休憩15分)
- 評価:☆☆☆★
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『アントニーとクレオパトラ』の舞台はこれが初見なので楽しみにしていた。戯曲も未読。古代ローマ史もの。アントニーが吉田鋼太郎、クレオパトラは安寿ミラ。
かなりの数の登場人物が登場し、多人数での戦闘場面というスペクタクル劇要素もある芝居だったが、視覚面のインパクトは今ひとつだった。軍人服とかクレオパトラの侍女たちの東洋風へそだしドレスのデザインはかっこよかったのだけれど。場面の転換がやたらと多く、ぽんぽんとかなりのスピードで話が展開する。
アントニーは振り幅の大きい人間的な弱さと強さを併せ持つ人物だ。勇敢で知略にたけた優れた武人である一方、クレオパトラとの愛に溺れ、情念に流される。この人物の人物造形は、名優吉田鋼太郎をもってしても、厚みと実体感に乏しいものに感じられた。もともとの脚本の弱さもあるのだろうけれど。いくつかの見ごたえのある見せ場を上手に作っていたが、物語展開の速さのなかでどっしりとした人物造形が犠牲になってしまったように思えた。安寿ミラのクレオパトラは見た目は麗しく、イメージにぴったりな感じがしたが、典型的「ファム・ファタール」である彼女の情念にも底知れぬ深さ、怖さを感じなかった。
台詞をしっかり伝える技術を持った役者たちによるきっちりと作られた芝居であり、台詞のやりとりを楽しみつつ見ることができたのだけれど、歴史劇っぽい重みに欠ける感じがしてどこか物足りない。幕間休憩のときに、隣にすわっていたおばさまたちが「なんか学芸会みたいねえー」と意地悪なことを言っていたが、確かにいい役者が出ているわりには学芸会っぽいハリボテ感を僕も感じた。面白くないというわけではなかったけれど。
しかしそれにしても毒蛇を使って自殺、ってのは洒落ている。クレオパトラのようなロマネスクな人物が実在していた、というのは驚くべきことだ。