閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

交換

青年団国際演劇交流プロジェクト2009
http://www.seinendan.org/jpn/info/info090808.html
『交換』l'Echange

  • 原作:ポール・クローデル
  • 演出:フランク・ディメック (ラ・フリッシュ・ラ・ベル・ドゥ・メ劇場(マルセイユ))
  • 原作戯曲邦訳:米谷ゆかり
  • 上演台本作成:平野暁人
  • ドラマターグ:小里清(フラジャイル)
  • 舞台美術:青木拓也、フランク・ディメック、セルジュ・ドゥローム
  • 衣裳:すぎうらますみ
  • 照明:伊藤馨(terrace)
  • 舞台監督:中野聡
  • 通訳:平野暁人
  • 出演:川隅奈保子 島田曜蔵 福士史麻 綾田將一(reset-N)
  • 上演時間:2時間半
  • 劇場:こまばアゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆
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ポール・クローデルは20世紀のフランスを代表する偉大な劇作家であるが、彼の作品が日本で上演される機会はあまりない。「交換」も日本初演だという。フランス人の若い(1970年生まれ)の演出家による公演。役者は日本人。
青年団がらみのフランス系演劇というのはおもしろいものにあたるのが希だ。あんまり期待せずに見に行く。視覚的には非常に洗練された美しさを持つ舞台ではあったけれど(最後の場面はとりわけきれいで印象的だった)、まったく予想通りの頭でっかちで退屈な芝居だった。ほぼ素舞台で音楽を用いないストイックな舞台、2時間半は長く感じた。思わせぶりな象徴的表現が満載である。

役者四名は熱演。見どころは男優の全裸芝居だと思う。男優が全裸の場面が最初と後半にある。なんで全裸なのかはよくわからないのだけれど。おちんちんをぶらぶらさせたままの演技が合計で40分ほどあるだろうか。全裸になるのは愛嬌のあるおデブ役者の島田曜蔵ではなく、reset-Nの綾田將一という役者だが、彼の一物は見事であった。他人の男性器をこんなに長い時間まじまじと目にしたのははじめての体験だった。あんまりうれしくはなかったけれど。はにわっぽい顔立ちの福士史麻がかなり可愛いので、どうせなら彼女がずっと全裸のほうが僕はよかったと思う。薄い生地のレオタードに羽をくっつけた川隅奈保子の衣装の奇抜さもよかった。
別の日に行われたアフタートークを聞いた人の報告を聞くと、全裸だったのは彼の「野生」を表現するため、それから実際、冒頭の場面は戯曲で岸から上がってきたばかりという設定だという。なるほど。しかしそんな「なぞなぞ」、普通の観客にわかるわけがない。この手の謎解きが好きな人は楽しめる舞台なのだろうと思う。僕には会わなかった。

原作は読んでいないが、クローデルのテクストなのでおそらく象徴的で美しいことばで満ちているのだろう。しかし物語自体はシンプルなものであるように思える。演出家の自己顕示欲によって原作を濁らせ、古典をわざわざ晦渋でひとりよがりなものに変えてしまうのは勘弁して欲しいと思う。
美しい場面はいくつかあったのでもう一度見れば、いろいろな発見がある舞台かもしれない。でももう一度あの2時間半につきあいたいとは思わない。