閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

アンヴィル! 〜夢を諦めきれない男たち〜

ANVIL! THE STORY OF ANVIL
http://www.uplink.co.jp/anvil/

  • 上映時間:81分
  • 製作国:アメリカ
  • 初公開年月:2009/10/24
  • 監督:サーシャ・ガヴァシ
  • 製作:レベッカ・イェルダム
  • 撮影:クリス・ソース
  • 編集:ジェフ・レンフロー、アンドリュー・ディックラー
  • 音楽監修: デイナ・サノ
  • 出演: スティーヴ・“リップス”・クドロー、ロブ・ライナー
  • 映画館:TOHOシネマズ六本木ヒルズ
  • 評価:☆☆☆☆★
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30年来活動を続けているカナダのヘヴィ・メタルのバンド、アンヴィルの再生を記録したドキュメンタリー。1980年代前半、このバンドはボン・ジョヴィなどとともに注目を集め、メタリカなどの次世代のメタルに大きな影響を与えた。しかしその後、20年以上ヒットに恵まれない状態が続いていた。バンドの核メンバーであるヴォーカル、ギターのリップスは給食センターで働いて生計をたて、ドラムのロブは建築現場の作業員をしながら、バンド活動を地元で細々と続けてきた。20年ぶりの大規模なヨーロッパツアーは無能なマネージャーの不手際もあり、移動手段が手配されなかったり、ギャラが払われなかったりのトラブル続き。13作目のアルバムのレコーディングでは、プレッシャーでストレスがたまったリップスがロブに八つ当たりして大げんかになる。そして苦労したアルバムを発売してくれるレコード会社が見つからない。「もう時代遅れだ」と冷たい仕打ちを受ける。
この50を過ぎてメタルに打ち込むおっさんが、その長い不遇期間にもかかわらず、卑屈になったり、ひねくれたりしていない。15の年にバンドをはじめたときの純粋な気持ちを持ち続け、音楽と生活についてまっすぐ向き合っている不器用な姿が感動的だ。レコーディング資金を作るために怪しげな電話セールスのバイトを始めようとするものの、彼にはそういった人を騙すようなまねは結局できないのである。レコーディング中の大げんかのあと、相棒のロブにぼろぼろ泣きながら「ごめん、おれがすべて悪いんだ。でもおまえにこうした感情をぶつけなければ、いったい誰にぶつけろって言うんだ! おまえはおれにとって兄弟同然の存在じゃないか! おまえがいなければだめなんだよ」とリップが訴える場面にもほろりとくる。こんな50男がいるか?

奇をてらうところのないストレートなドキュメンタリーが、この二人のまっすぐな生き様、人間を描き出す。彼らの音楽に関心がなくても楽しむことができる作品だ。見ているうちに彼らを応援したくなってしまうはずだ。