閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

HARAJUKU PERFORMANCE PLUS 2009

http://www.lapnet.jp/eventinfo/special/lm/hpp/index.html

  • 上演時間:約3時間(休憩一回)
  • 劇場:原宿 ラフォーレ・ミュージアム
  • Open Reel Ensemble テープを巻き戻せ feat. 弦楽四重奏」
    • 制作とリール合奏:和田永、佐藤公俊、吉田悠、難波卓己、吉田匡
    • 弦楽四重奏:難波卓己 (Vn㈵)、 花井悠希(Vn㈼)、須原杏(Va)、石貝梨華(Vc)
    • 評価:☆☆☆★
  • contact Gonzo「ddddddddd!!ccoonnttaaccttggoonnzzoo!!!!!!!!」
  • 柴幸男「反復かつ連続」
    • 作・演出:柴幸男
    • 出演:内山ちひろ(インパラプレパラート)
    • 評価:☆☆☆☆★
  • はむつんサーブ「はむつんサーブ」
    • 出演:りきっちょ、だーよし
    • 評価:☆☆☆★
  • トーチカ「PiKA PiKA Performance & Short Workshop」
    • 出演:モンノカヅエ、Ritz、辻村コウタ
    • ビートボックス:櫻井響
    • 映像:ナガタタケシ
    • 評価:☆☆☆★
  • 生西康典
    • 出演:点子、川口隆夫(dumb type)、吉田アミ
    • 美術:西野哲也(手裏剣プロダクツ)
    • 装置:南志保
    • ヘア&メイク:Mika + CHISHIN
    • 衣装提供:Bilitis、LAD MUSICIANTHEATRE PRODUCTS、m.soeur
    • 評価:☆
  • 山崎広太「IRUKA 2」
    • 出演:山崎広太
    • 評価:☆☆☆
  • 黒田育世「モニカ モニカ」
    • 振付・出演:黒田育世
    • 音楽:松本じろ
    • 評価:☆☆☆☆
                                                                                  • -

柴幸男の「反復かつ連続」が再演されるというので、HARAJUKU PERFORMANCE +という複数のパフォーマーの合同公演を見に行った。柴幸男以外は初見のものばかり。
思い切って小三の娘を連れて行った。「反復かつ連続」を見せてみたかったのだ。この作品は今年の一月にシアタートラムで見て大きな感銘を受けた作品で、そのときもし再演の機会があれば今度はぜひ娘と一緒に見たいと思ったのだ。しかしながら娘を連れて行ったのは、結果的には失敗だったかもしれない。全体で休憩を含み三時間という長さが想定外だった。二時間ぐらいで終わると思っていたのだった。休憩後の三つのパフォーマンスはパントマイム系、舞踏系、そして黒田育世のダンスだったのだけれど、後半最初の生西康典のパフォーマンスがひどく退屈な代物で、飽きてしまった娘が我が儘を言い出したのだった。うーん、もうちょっと我慢できるかなと思っていたのだが。なんとかなだめて、その後の山崎広太も座らせた。黒田育世のときには彼女は寝てしまったが、まあ仕方ない。前半で会場を出ればよかったのだが、その決断ができなかったのが悔やまれる。悪いことをしたなと思った。生西康典のときは小声でぶーぶー言っていたので他の客にも迷惑をかけたかもしれない。申し訳ないの二乗だ。こちらもハラハラして落ちついて舞台を見てられなかった。子供向きでない公演も一緒に見に行けたらと思ったのだけれど、やっぱり難しい。といっても向こうが大人になったらその頃にはつきあってくれない可能性が高いし。幸い娘は父親と外出すること自体がまだ楽しいようだ。今回は退屈な時間を無理矢理我慢させたのだけれど、劇場を出るときには娘の機嫌は直っていた。というかなぜかやたらと上機嫌になっていた。なんでだろう?

前半の出し物はそれなりに娘も楽しめたようだった。
Open Reel EnsembleはYouTubeの映像を見て面白そうだと思ったのだが、実際の音楽は私の趣味からは外れたものだった。何よりテープを巻き戻すときのきゅるきゅるいうノイズが苦手だった。音量も大きすぎたし。しかし大型のオープンリール・テープレコーダーを四台並べて、その前で飛び跳ね踊りながら演奏するという絵柄はなかなかかっこいいものではあった。

二つ目のcontact Gonzoはよかった。ステージ前面にドラムセットがあり、華奢な女性が全身を使い、髪の毛を振り乱しながら激しいドラム・ソロ演奏を延々と続ける。その後ろ側でむくつけき男四人が乱闘を模したダンスを太極拳のようななめらかなコンビネーションで見せるというもの。ばかばかしくて何か笑ってしまう。この出し物は面白かったけれど、このユニット、今後はどのようなパフォーマンスを作っていくのだろう?

三番目が私の目当て、柴幸男作、内山ちひろの一人芝居「反復かつ連続」だった。始まった途端、一月に見たシアタートラムの舞台の記憶が蘇り、目が潤んでしまった。内山一人である家族のある朝の一場面を再現する。彼女は一人ずつ、その家族のメンバーを順々に演じる。演じるたびに既に演じた人物の声が重なり、情景が明らかになっていく。母親と何人かの姉妹の賑やかな朝の情景だ。母親のパートが重なった後、舞台上に声のやりとりだけが木霊する。しばらくすると老婆になった母が舞台前面中央に座り、その声に耳を傾ける。舞台外から老婆を呼びかける声。老婆は「いってきまーす」と答える。あの日の朝、彼女が聞いた娘の言葉。斬新な創意によって物語のノスタルジーがダイナミックに増幅される。素晴らしい作品だ。なんでこんな芝居が書けるのだろう?
「最後におばあさんが『いってきまーす』って言うのはなぜ?」と娘に聞かれた。答えを探しているとまた涙が出そうになった。決して戻ってはこない、かけがえのない日常の美しさがこの台詞によって強調される。私も老人になると過去にあった宝石のようないくつかの美しい時間の断片を想起しながら、死ぬまでの時間を過ごすことになるのだろう。

はつむんサーブは二人組によるパントマイム風、ロボット振りの滑稽なダンス。
トーチカはライトの残像をつかって壁にいろんならくがきて遊ぶという感じ。最後は観客に光るお手玉ボールが配られて、観客も光絵作りに参加する。娘はこれが一番お気に入りだったようだ。私は光残像絵が映し出されるタイミングがもっさりと遅いことにいらいらしてそれほど楽しめなかった。