OM-2 /黄色舞伎團
http://www.om-2.net/
- 構成・演出:真壁茂夫
- 音楽監修・作曲:奥原匡光
- 作曲、編曲:吉川潤、佐々木敦
- 舞台美術:速水まりや、寺澤勇樹、五木田唯衣
- 舞台監督:長堀博士
- 映像:藤野禎崇
- 照明:三枝淳
- 音響:佐久間修一、佐々木孝憲
- 大道具:大根田真人、佐藤一茂
- 小道具:池田包子
- 出演:佐々木敦、中井尋央、柴崎直子、丹生谷真由子、平澤晴花、金原知輝、吉澤啓太、村岡尚子、舞橋明夜、TAKESHI
- 上演時間:80分
- 劇場:日暮里サニーホール
- 評価:☆☆☆☆☆
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OM-2の舞台だけに破壊力抜群の前衛を期待していたのだけれど、期待以上に刺激的な舞台だった。見終わったあと後頭部がじんじんしびれた。
二月の舞台、OM-2を見なくて何をみるのだっ、と言いたいくらい素晴らしい舞台だった。理性のたがが外れた生々しい自我の断片が炸裂したかのようなラディカルな表現に痺れる。その表現の圧力は強烈だ。何かを演じる演技ではない。舞台上で露わにされているのはパフォーマーたちの生身、内蔵、理性によって抑圧されていた原始的な感情の叫びそのものであるかのように感じられる。変容していく舞台美術のおぞましさと渾沌が作り出す変態美にしびれる。心の奥に蓄積していたへどろが浄化されたような爽快感を感じる。
舞台は大きく三部に分かれる。
背景は黒幕で覆われている。舞台と客席の最前列は同じ平面にある。最初の場は、高さ二メートル半ほどの白いついたてが客席に向かって、舞台奥に半円上に並べられている。舞台の奥行きはかなり深い。左手奥にはベッドがあり、女性が身を横たえる。女性は最初雑誌か何かを読んでいたがじきにふとんをかぶって眠ってしまう。舞台中央にはひもで結わえられた雑誌と書籍の束。右手には簡素で小さいテーブルと椅子。
最初のパートでは巨漢の特殊パフォーマー、佐々木敦が狂気の発作を起こしたかのように暴れ回る。最初は静かに、内部に狂気をため込むように、ぐちぐちと右側のテーブルで動いている。佐々木敦の不気味な迫力にはどこか性的な鬱屈を感じる。マスターベーションを執拗に繰り返しているように思える。しばらく静かな場面が続く。しかしこれは嵐の前の静けさだ。うっくつした思いが臨界点に達したかのように、男は突然狂乱の発作を起こす。顔面を真っ赤に染めて、黒い空間を動き回る。中央に置いてあった雑誌と書籍のたばを手に取ると、それを空中に放り投げる。すると各ページが空中でばらばらと剥がれ、床に散乱する。つぎつぎと雑誌、書籍を放り投げ、その度に大量のページが床に散乱する。ライトに照らされながらひらひらと舞い落ちる紙片の山が美しい。ばらまかれる紙片は尋常な量ではない。広い舞台を大量の紙片が埋め尽くす。そのおぞましくも美しい風景は圧巻だ。
この大量の紙片の散乱する床が次のパートの舞台美術となる。半円状に並べられていた白い衝立が前方に移動し、横一列に並べられて背景を作る。照明で照らされた衝立の向こう側に人影が映る。最初は一人の男が衝立の前方で痙攣するかのように激しい動きでドラム演奏を行っていた。左手前方にはいつのまにかソファが置かれ、そこには男がねそべっている。衝立が取り払われ、合奏によるドラム演奏が行われる。ドラム合奏はいくつかのバリエーションで30分ほど続く。よく訓練されたコンビネーションでの素晴らしい演奏だった。演奏中、上方からは焼け焦げた紙片のような黒い紙吹雪が持続的に、大量に落ちてくる。その黒い紙吹雪のなか、トランス状態に陥っているかのように激しいドラム合奏が続く。
この見事なドラム演奏は半年間の猛練習の賜だそうだ。パフォーマーはもともと音楽の専門家ではない。ドラムの表現が肉声となるまでにいったいどれほどの時間と労力が注がれたのだろうか。
最後のパートは演者が横に並んでの合唱とダンス。そのおどろおどろしい歌いっぷりにもかかわらず、心の底から絞り出すような痛切な歌声の合唱は意外なほど美しい。壮絶である。叫び声のような歌声と痙攣のようなダンスに心奪われ、金縛りのような状態になって、見入り、聞き入る。