閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シテール島への船出

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シテール島への船出(1983)TAXIDI STA KITHIRA VOYAGE TO CYTHEREA

  • 上映時間:140分
  • 製作国:ギリシャ/イタリア
  • 初公開年月:1986/02/
  • 監督:テオ・アンゲロプロス
  • 製作:テオ・アンゲロプロス
  • 脚本:テオ・アンゲロプロス、タナシス・ヴァルニティノス、トニーノ・グエッラ
  • 撮影:ヨルゴス・アルヴァニティス
  • 音楽:ヘレン・カレンドルー
  • 出演:ジュリオ・ブロージ、ヨルゴス・ネゾス、マノス・カトラキス、ドーラ・バラナキ
  • 映画館:高田馬場 早稲田松竹
  • 評価:☆☆☆☆★
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32年前にソ連に亡命した老父がギリシャに帰国する。迎え入れる家族、村人たちは戸惑いながらも彼を受け入れる。老父はどこか他人を拒絶するかのような孤高の厳しい雰囲気を漂わせている。老母だけが慈しみ深く彼にそっと寄り添う。故郷の村で土地売買に承諾しなかった彼は故国を追放されることになった。しかしソ連行きへの船の乗船を拒否されてしまう。再上陸が許されない彼は雨のなか、港の海上の浮島にただひとり放置される。
夜、港からの妻の呼びかけに、彼はバイオリンのか弱い演奏で答える。妻は夫と一緒にいることを望み、その願いはかなえられる。明け方、浮島を陸上と結んでいたもやいロープを解いて、老夫婦は灰色に煙る海の中へと旅立っていく。
老人とともにあてもなく灰色のなかを放浪する単調で陰鬱な長い序曲にひたすら耐えると、最後の数十分に極上の美しさと出会うことができる。最後まで行き着いたとき、あらためて重苦しい序曲の意義がわかるようになるはずだ。