閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

王女メデイア

SPAC+ク・ナウカ
? 王女メデイア:SPAC 春の芸術祭2010

  • 台本・演出:宮城聰
  • 原作:エウリピデス
  • 音楽:棚川寛子
  • 照明:大迫浩二
  • 音響:水村良、青木亮介
  • 衣裳:武田徹、郭ジョンミン
  • 出演:美加理、阿部一徳、赤松直美、池田真紀子、石井萠水、大高浩一、片岡佐知子、木内琴子、榊原有美、桜内結う、鈴木陽代、大道無門優也、高澤理恵、たきいみき、永井健二、仲谷智邦、本多麻紀、三島景太、吉植荘一郎、若宮羊市
  • 劇場:静岡 舞台芸術公園 野外劇場「有度」
  • 上演時間:80分
  • 評価:☆☆☆☆★
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ク・ナウカの代表作『王女メデイア』の再演。テクストの読み替えの素晴らしさ、パフォーマンスの完成度の高さ、華やかな様式性の醍醐味を堪能する。スピーカーを男性、ムーバーを女性が担当することで男の声に合わせて繰られる人形振りの女たちという男女の対立が強調されている。また舞台は近代の日本に設定され、植民地時代の日韓の支配-被支配の構図が古代の物語の枠組みのなかに巧みに重ねられている。メデイアは植民地である韓国から連れてこられた姫であり、嫁ぎ先の日本で夫に捨てられてしまう。この構図が一気にひっくり返される最後の場面の爆発力が爽快だ。
最初から最後まで舞台を支配する美加理のパフォーマンスの求心力はやっぱり圧倒的だった。とりわけ復讐を決意する場面でのモノローグと舞踊の迫力に引き込まれる。悲劇ではあるがところどころ遊び心に満ちた下世話でユーモラスな場面も含み、猥雑と究極の洗練が独特の祝祭的時空を作り出していた。