- 作:近松門左衛門=作
- 補綴:国立劇場文芸課
- 美術:国立劇場美術係
- 出演:坂田藤十郎、中村梅玉、中村翫雀、市川左團次、市川團十郎 ほか
- 上演時間:3時間45分(休憩50分)
- 劇場:国立劇場大劇場
- 評価:☆☆☆☆
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久々に歌舞伎を見にいった。演目は『国姓爺合戦』の通しでの上演。
『国姓爺合戦』は近松門左衛門作の時代物で「国姓爺」とは大航海で知られる明朝末期の将軍、鄭成功のことだ。鄭成功の母親は日本人で彼は7歳まで日本で生まれ育ったという。『国姓爺合戦』は和藤内(国姓爺)とその父母が中国に渡り、韃靼人によって崩壊の危機にある明朝を救うために活躍するという話だ。今回の上演は4幕構成で場面は、明国の宮廷での皇帝殺害、平戸での和藤内、中国に渡って虎退治をする和藤内、中国獅子ヶ城での錦祥女と移っていく。
荒事特有のダイナミック(すぎる?)展開、表現の荒唐無稽さが面白い作品だ。何年か前に歌舞伎鑑賞教室で松緑の和藤内で、錦祥女獅子ヶ城楼門の場だけを見たことがある。錦祥女と和藤内の母の渚のやりとりが中心のこの場は退屈で、今回も眠りに落ちてしまったのだけれど、松緑の和藤内はいかにも乱暴者でやんちゃな豪傑といった感じで印象に残っている。團十郎の和藤内も愛嬌があってむやみに可愛らしかった。和藤内は衣裳がとてもポップだ。赤地に金色の釦のようなものがたくさんついていて、丸っこい体型と組み合わさってまるでサンタクロースか赤鬼みたいだ。
荒事のスペクタクルが見られる場が面白かった。千里が竹の虎退治の場は着ぐるみの虎がとても可愛らしい。この場ではこの虎がほとんど主役で観客の人気を集めていたのに配役表には誰がやっているのか記述されていない。そういう習慣なのだろうか。この場の最後では和藤内に降参させられた韃靼人の兵士たちが、和藤内が巨大な太刀をぐるりと回しただけで、月代が剃られてしまう。こういった大らかで馬鹿馬鹿しい趣向がところどころにある。
獅子ヶ城楼門の場の主役はこの城の城主の妻、和藤内と異母姉にあたる錦祥女だ。だらだらとしていてあまり面白くない場だが、錦祥女演じる藤十郎の動きは鮮やかで年齢を感じさせない。最後は錦祥女と和藤内母の渚が、和藤内と城主の甘輝が心置きなく韃靼征伐できるよう自害するというひどい結末なのだが(甘輝は女への情から韃靼を裏切ったと祖人から誹られることを恐れていた)、その瀕死の二人の女が苦しんでいる横で、和藤内の巨大な太刀を使ったナンセンスな笑劇が奴たちによって演じられる。悲劇のすぐ隣で笑劇。歌舞伎ならではのコントラスト。凄いなあ。