閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

舌切り雀

青年団『平田オリザ・演劇展vol.1』|こまばアゴラ劇場
『舌切り雀』

『Le moineau à la langue coupée〜「舌切り雀」フランス語版〜』(日本語字幕付き)

平田オリザ作の子供向け芝居、『舌切り雀』の日本語版とフランス語版を続けて見た。山内健司の一人芝居でおじいさんとおばあさんは人形で、雀は山内が演じる一人芝居。フランス語版はすでに140回近く、フランス各地の学校なので公演されて好評を博したという。終演後のアフタートークで山内氏からフランス公演の話があった。フランスの公共劇場が主に主催するかたちで地域の学校の授業の枠内で公演を行うことが多かったそうだ。フランスの公共劇場には大都市郊外の移民地域にあることも多く、そういった地域の学校には荒れた学校も少なくない。山内氏はそうした荒れた学校でもこの一人芝居の公演を行ったという。経済的、文化的にも恵まれない地域でこそ継続的な文化活動は重要だという考えが向こうの文化政策にはあるようだ。
作品自体はかなりオーソドックスな子供向き民話劇という感じがした。原作の内容をほぼそのまま提示している。観客参加の試みが取り入れられていたが、大道芸芸人でもあれくらいの仕掛けは普通に使う。一人芝居としてよくできてはいたけれど、平田オリザ戯曲ならではの新しい試み、ユニークなアイディアが盛り込まれているようには私は思わなかった。ちょっと物足りない。
演じる山内健司の愛嬌ある存在感がとてもいい。人なつっこい表情での演技に引き込まれる。人形遣いもよかった。人形操作はこの芝居以前にはやったことはなかったとのことだが、丁寧に人形を扱っていることが伝わってくる演技だった。