閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

解体されゆくアントニン・レーモンド建築 旧体育館の話

趣向
[http://shukoushuko.web.fc2.com/qu_xiang_chun_gong_yan_jie_tisareyuku_antoninremondo_jian_zhu_jiu_ti_yu_guanno_hua.html:title=趣向 春公-戯曲:オノマ リコ(趣向)

  • 演出:黒澤世莉(時間堂)
  • 照明:和田秀憲
  • 音響:鶴岡泰三
  • 衣裳:富永美夏
  • 出演:岩井晶子、上村正子(さいたまゴールド・シアター)、菊池美里、窪田優、熊川ふみ(範宙遊泳)、サキヒナタ、清水久美子、辻村優子、米沢絵美
  • 上演時間:二時間
  • 劇場:横浜 KAAT大スタジオ
  • 評価:☆☆☆☆
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劇団初見。黒澤世莉演出作品ということで興味を覚え、見に行った。横浜まで足を運ぶかいのあった美しい作品だった。
感想をワンダーランドサイトのクロスレビューに投稿した。
http://www.wonderlands.jp/archives/17936/

東京女子大がモデルとなっている。繊細で感受性が強く、そして若さゆえの未熟さと純粋さを持つ女性たちの「聖域」としての女子大という空間が、がらんどうの舞台上で象徴的に表現される。知的好奇心旺盛な彼女たちにとって、哲学、文学、芸術は拠り所となるだろう。ここで舞台となっている名門私立女子大は未婚の「ボヴァリ夫人」たちが集うアジール(避難所)のような場所だ。行き詰まる閉塞感のなか、将来への漠然と不安のなかで、彼女たちはけなげにもがき苦しむが、それは日本のある階層にのみ許された特権的な苦悩でもある。そしてその苦悩の突破口はおそらく大学卒業後の彼女たちにはないように思える。彼女たちのほとんどは居場所を失ってしまうのではないだろうか。
黒澤世莉の演出はテキストの丁寧な読み込みから優れた演劇的創意を引き出している。作品を利用して演出家の個性を自己喧伝するというところがないのに好感を持っている。この前の三好十郎「廃墟」とはまったく異なるタイプの作品だったが、彼の適応力の高さ、読む能力の高さには驚かされる。