閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

プッチーニの愛人 PUCCINI E LA FANCIULLA

プッチーニの愛人 | オフィシャルサイト

  • メディア:映画
  • 上映時間:84分
  • 製作国:イタリア
  • 初公開年月:2011/06/18
  • 監督:パオロ・ベンヴェヌーティ
  • 共同監督:パオラ・バローニ
  • 原案:パオロ・ベンヴェヌーティ、パオラ・バローニ
  • 脚本:パオロ・ベンヴェヌーティ、パオラ・バローニ
  • 撮影:ジョヴァンニ・バッティスタ・マッラス
  • 美術:パオロ・ベンヴェヌーティ
  • 音楽コーディネーター:パオラ・バローニ
  • 出演:タニア・スクイッラーリオ、リッカルド・ジョシュア・モレッティ、ジョヴァンナ・ドッディ、デボラ・マッティエロ、フェデリカ・ケッツィ
  • 映画館:新宿シネマート
  • 評価:☆☆☆☆★
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1909年、オペラ《西部の女》の作曲中に、プッチーニ家で働いてた若い女中が自殺した。派手な女性遍歴でも知られるプッチーニが関係する最大のスキャンダルだったという。この女性の自殺を巡る状況を映像化した映画である。この女性が無実の罪によって、プッチーニの娘の自己保身のためについた嘘と妻の激しい嫉妬によって自殺へと追い込まれたことは映画のなかではっきりと示されている。この映画の独創はこの悲壮ではあるが陳腐でもある物語を、ほとんどサイレント映画にまで近づいた静謐さのなかで、見るものをはっとさせるような驚異的な映像美でもって表現していることである。音楽家が話の中心にある映画にも関わらず、音楽の使用もごく控え目だ。プッチーニが弾く弱く柔らかいピアノの音、プッチーニ家の隣にある酒場の女が歌う民謡など。しかしこのささやかな音楽の使用が抒情的な美に満ちた映像と組み合わさって絶大な効果をもたらしている。
とにかく映像の数々が息を呑むほど美しい。窓やドアの隙間から室内に入る陽光の表現はジョルジュ・ラトゥールやフェルメールの世界を映像画面に描き出す。そして家屋やイタリアの田舎の風景、そこに人形のように配置され、動く人々の姿、あらゆる映像が、安定した構図と繊細な色彩のバランスとともに、絵画的な美しさを作り出していた。