閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

サブウェイ

極東退屈同情

  • 作・演出:林慎一郎
  • 振付:原和代
  • 出演:あらいらあ、門田草(Fellow House)、後藤七恵、ののあざみ、猿渡美穂、小笠原聡、井尻智絵(水の会)、中元志保
  • 上演時間:2時間20分
  • 劇場:伊丹 AI・HALL
  • 評価:☆☆☆
                          • -

作・演出を担当する林慎一郎氏が主宰するユニット。今回が私が初見。公演ごとに俳優を集めるプロデュース形態をとっているとか。
「サブウェイ」というタイトルから地下鉄の話かと思えばそうではない。地下鉄を利用する人たちのエピソードをコラージュ風に構成したヴァラエティだった。月曜から日曜までの場に分かれ、各場は一人芝居、群舞、会話劇、朗読など多様な要素で構成されている。
まとまった物語はないけれども、それでも月から木までは連作短編小説のように登場する人物たちに緩やかなつながりは示唆されていた。しかし金、土、日と進むにつれ混乱が進み、状況が混沌としてくる。各場はそれを担当する役者の魅力によって面白かったり、面白くなかったり。最後のほうは作・演出は混乱を敢えて放置、拡大しているように思えた。

前半はナンセンスなレビューとして愉しんで見ていた。ものすごく芸達者な役者に何回か笑わされたこともあった。ユニークな雰囲気のコントのアンソロジーだと思って見ていた。後半にのダラダラ感は敢てやっているのだろうし、冗漫さは作品の持ち味とも言えるかもしれない。しかし途中で面白い場でかかっていた魔法から覚めてしまい、少々白けた気分で付き合っている感じになってしまった。

劇団どくんごから泥臭さを取り除いた感じのようにも思った。劇団どくんごについては六月の公演を見た某人がツイッターで「八十年代の悪しきエチュードの名残り」と否定的な感想をつぶやいたことが波紋を起こしたのだけれど、今日の公演を見て思い浮かんだのはこの「八十年代の悪しきエチュード」という言葉だった。実際にどう作ったのかは知らないけれど、即興的に見え、ナンセンス色の強い各場の表現は、その場を担当する役者のアイディアを取り入れいた集団創作的なやり方で作られているように私には見えた。某人がどくんごを評したこの否定的なフレーズが頭に浮かんだ途端、私は極東退屈道場の『サブウェイ』の魔法からすぐに解き放たれ、白けた気分になってしまったのだ。以後、このフレーズが提示した枠組みのなかを通してしか作品を受け止めることができなくなってしまった。言葉ってのは恐ろしいものだなと思う。言語化してしまった途端、感じ取っていたはずの色んな思いがその言葉の枠組みのなかに集約され、その外側に存在しているはずの言葉にならない思いがみな消え失せてしまうこともあるのだから。