- 上映時間:114分
- 初公開年月:2011/08/06
- 監督:新藤兼人
- プロデューサー:新藤次郎
- 原作:新藤兼人
- 脚本:新藤兼人
- 撮影:林雅彦
- 美術:金勝浩一
- 編集:渡辺行夫
- 音楽:林光
- 照明:山下博、永田英則
- 録音:尾崎聡
- 出演: 豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、大杉漣、柄本明、倍賞美津子、津川雅彦、川上麻衣子
- 映画館:新宿テアトル
- 評価:☆☆☆★
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
これが新藤兼人の監督最終作となる。監督の徴兵体験をもとにした物語。「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので、何の風情もありません」というハガキを監督は実際に岡山の農民だった同年兵に見せられたそうだ。この短い文面に込められた切ない思いを思うと胸が締め付けられる。
新藤が所属した戦争末期にかき集められた丙種合格の中年初年兵部隊100名のうち、生き残ったのはわずか六名だった。たまたま新藤はくじ運がよく、終戦まで内地に待機していたのだ。戦争反対のメッセージが愚直にはっきりと表明されている作品であるが、銃後の農村、そして戦後復員した元兵士を迎える故郷の現実の身も蓋もなさは脱力させるような間抜けなところもある。厳しい状況のなかとにかく生き抜いていこうとする人間のたくましさ、しぶとさ、そしてその功利性もしっかり描いているのが新藤監督らしい。
柄本明演じる老義父が、土下座をして嫁の大竹しのぶに、家に残って老人を支えてくれと頼む浅ましさ、それを無表情で受け入れる大竹しのぶの芝居がとてもいい。ただ全体的には大竹しのぶが突っ走りすぎで、ずいぶんとうっとうしい雰囲気の作品になってしまった。後半の展開はとりわけ不条理で混沌としている。登場人物たちは戦争がもたらしたあまりに不条理な状況を受け入れ続けていたために、その許容の限界を超えてしまい狂気の域に達し、何がなにやらわからなくなってしまったような感じだ。結果的にグロテスクな味わいの反戦ファンタジー劇という奇妙な作品になった。
変な話になってしまったなあ、と思いつつ、でも戦争の災厄のもたらす不条理感は実際にはこれ以上のものであったようにも思われる。ばたばたと人が死んでいく非現実感のなかで日常を維持していくというアクロバットな日々のなかで、精神の均衡を失ってしまった人はとても多かったに違いない。