閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

魔笛

東邦音楽大学オペラ定期公演

東邦音大のオペラ公演《魔笛》を観に行った。外部からのキャストやスタッフも混じっているが、桐朋音大の教員やOB、学生を中心にした公演で、基本的には内輪向きの公演なのだと思う。会場は川越の桐朋音大キャンパスにあるホール。キャンパスの建物はまだ新しかった。

公演時間は一幕が70分、二幕が100分。
会場は500人ぐらい収容できる大きさ。こんな小さな会場でオペラを見るのは初めてのような気がする。舞台美術は書き割りを使った簡素なもので、舞台の間口も奥行きも狭い。しかし《魔笛》はこれぐらいこじんまりした会場でやるのも悪くないように思った。ベルイマンの映画のセットもこんな感じだったように思う。

タミーノをブータンの国王とする設定変更はあまり同意できないし、ドラマの上で特に効果的だとは思わなかったけれど、オペラに普段なじみのない一般の観客には舞台をより親しみやすくする効果はあったかもしれない。歌はドイツ語だが、台詞は日本語になっていた。演奏者も観客も日本人なのだから、もう一歩踏み込んで歌も日本語版で聴きたかったように思った。台詞の部分は俗語的表現もつかったかなりくだけたものになっていたが、私は台詞の翻案についてはそれほど面白いとは思わなかった。《魔笛》のなかで私が一番好きなパパゲーノとパパゲーナのデュオのところで、地元の幼稚園の園児がわらわらと出てくる演出はちょっと楽しかった。学芸会じみた安っぽさも出てしまったけれど、こういうくつろいだ雰囲気の《魔笛》は悪くない。

舞台装置は簡素だったけれども、衣裳はかなり凝っていた。音楽のパフォーマンスは、普段はCDなどで超一流の演者の演奏を聴いているので、やっぱり物足りないところがある。歌手によって出来に相当なばらつきがあるのは仕方ない。それでも夜の女王とパパゲーノという要となる役柄を演じた歌手がよくて、全体としては楽しんで聴くことができた。音楽のテンポは全体に若干早め。

支離滅裂な物語の展開をじっくり追いながら鑑賞することができた。見るたびに《魔笛》は奇妙な物語だなと思う。