- 作・演出:タニノクロウ
- 出演:飯田一期・島田桃依(青年団)・瀬口タエコ・山田伊久磨
- 構成:玉置潤一郎・山口有紀子・吉野万里雄
- 照明:阿部将之
- 音響:佐藤こうじ
- 特殊造形:小此木謙一郎(GaRP)
- ヘアメイク:井上悠
- 劇場:青山 はこぶね
- 評価:☆☆☆☆☆
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三月十二日から二十二日までパリに行くので、一月、二月の観劇はできるだけ本数を減らすようにしている。それでペニノのこのハコブネ公演も行かない予定だったのだけれど、ツイッターのTL上での感想を読んでやはり見たくてたまらなくなり、追加公演のチケットを購入してしまった。いやしかし、観に行って良かった。私にとっては観に行くべき公演だった。
元々タニノクロウの住居であるマンションの一室、「ハコブネ」での公演は庭劇団ペニノのエッセンスがさらに凝縮されたような濃厚さがある。
私は今まで庭劇団ペニノの公演を観て、期待外れだったことは一度もない。毎度、独特の怪しげでいかがわしい雰囲気を漂わせながら、公演毎に異なった風景を見せてくれる。こちらの期待に応えつつ、さらにこちらの期待の地平を超えた意外性のある世界を常に提示してくれるのが庭劇団ペニノである。今回の『誰も知らない貴方の世界』は、前回のハコブネ公演『苛々する大人の絵本』の続編のような世界となっている。『苛々する』と同様に、上下二層式になった独創的、幻想的、グロテスクな舞台空間で、物語というよりむしろ妄想の連鎖というべきものが展開していく。
受験生の食欲と睡眠欲のストレスが生み出したとされる怪物じみた羊の妖精と豚の妖精のデュオが上層の舞台で始まる。調度品はすべて怒張したペニス。受験生の静的抑圧は、部屋中にあふれる大小さまざまな、ペニスのオブジェに象徴される。羊と豚の妖精のデュオのあとの第二幕は、下層のタイル張りの手術室のような空間での弟と兄のデュオ。第三幕では上層と下層の世界が混じり合う。リコーダーによる《パッヘルベルのカノン》の合奏によって、一応舞台は収拾がつくのだが。
幼い頃の性的妄想を、そのまま長い年月のあいだ維持し、腐敗し、発酵させたかのような淫靡で変態的世界。しかしその妄想はグロテスクでありながら、どこか抒情的で甘美でノスタルジックでもある。性的抑圧によって徹底的に歪められたメルヘンの世界というか。とにかくすばらしかった。