閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

希望

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  • 構成・演出:チェ・スンフン(劇団チャンパ)
  • 出演:柴崎直子、丹生谷真由子、平澤晴花、笠松環、河晴美、齋藤陽子、續木淳平、よしだまさひこ
  • 演出助手:田中新一 
  • 舞台監督:佐藤一茂
  • 照明:三枝淳
  • 音響:齋藤瑠美子 
  • 映像:速水まりや
  • 劇場:日暮里 d-倉庫
  • 上演時間:2時間
  • 評価:☆☆☆
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韓国の前衛劇団チャンパとOM-2の合同公演。チャンパを主宰するチェ・スンフンが構成・演出し、OM-2所属の8人の日本人俳優が演ずる。
台詞のないパフォーマンスだった。会場に入ると四人の役者が壁際で硬直している。観客のほうには向いていない。鬱屈した精神を表象するような苦しげなポーズでじっとしている。四人のうち一人は便器に座り、一人はバスタブの中にいる。一人は壁に向かってもたれかかっていた。舞台はほぼ正方形。周囲には雑誌などが散らばっているが、中央部はがらんと空いたまま。

四人の別の役者が入場してきて、新聞紙で顔を包んだりしはじめる。ねっとりとした苦しげな動きで、じわじわと地味に何かの作業を続ける。八人の役者のうち、何かの作業を舞台中央で行うのは一人で、他の役者は壁際で硬直しているというのが原則的なスタイルとなっている。机を指でとんとん叩くようなノイズが始終流れている。

動いている演者のパフォーマンスは地味で単調だが、十五分に一回ほど急激に高揚した狂乱タイムが入り、この時はノイズの音量も大きくなる。この狂乱タイムには、演者はのたうち回ったり、叫び声を上げたり、歌を歌ったり、とにかく派手に動き回る。この狂乱時間で狂乱するのは原則的に一人だけで、他の役者たちは壁際で屍体のように転がって硬直したままだ。

このサイクルが二時間続く。狂乱時間のはじけぶり、死にものぐるいといった感じのパフォーマンスで「よくやるなあ」と呆れながら感心したのだけれど、今ひとつ破壊力に欠ける。OM-2には佐々木敦という巨漢特殊俳優がいるのだけれど、彼の暴れ方のすさまじさと比べると、今日の演者の壊れ方は物足りない感じがした。ゴキブリコンビナートと比べても弱い。ただし骨壺入れの箱から骨を模した白い粉をまき散らすパフォーマンスはよかった。灰をまくように、相当な量の白い粉を浴びながら、踊り狂う。やはりある程度、量がないと迫力がでない。観客にはマスクが事前に配付されていた。

地味で静かな時間と激しく暴れ回る時間のコントラストで見せたかった舞台であるが、展開がパターン化していて、単調でもあった。地味な時間にはしばしば落ちた。