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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

高円寺びっくり大道芸2012

イベント 大道芸

高円寺びっくり大道芸2012
4/28(土)、4/29(日)に行われた高円寺びっくり大道芸に行ってきた。28日は仕事があった日なので2時間ほど、29日は会場付きのボランティア・スタッフの仕事の合間にいくつかのパフォーマンスを見ただけだったが、それでも充分に楽しむことができた。

28日はプラノワと大駱駝艦のゴールデンズを見た。
プラノワはアコーディオン奏者の女性とジャグリングの男性のデュオ。言葉を使わない二人のやりとりから、いかにも息の合った雰囲気が感じられる。時折二人でのダンスのような動きも入る。音楽と曲芸、動きや表情を使った言葉のないのやりとりによって、ジャグリング芸の展開に引き込まれてしまう。技芸の成功を観客が見守るという雰囲気が、二人のやりとりとアコーディオンの調べのなかで、自然に形成されていた。男性ジャグラーは優しげな感じのハンサム、アコーディオン奏者は『アルプスの少女ハイジ』をどこか連想させるようなキュートな女性で愛嬌がある。見終わったあとはほのぼのとした気分になるパフォーマンスだった。
舞踏の大駱駝艦のメンバーによる金粉ショー、ゴールデンズを見るのはこれがはじめてだった。男性二人、女性二人が三十分、踊った。女性は前半は外衣を羽織っていて上半身は隠されているが、後半には外衣をとってTバックの下着を身につけただけになる。男性は最初からTバックのみ。ほぼ裸体であるためにやはりエロチックな要素はある。しかし全身金粉の身体がうねるように舞う様は、その音楽の効果と相まって、滑稽でありながら荘厳でもある宗教的祝祭のように感じられた。笑顔を湛えて優雅に踊る女性二人は動く観音菩薩像のようであったし、憤怒にもみえる表情で動く男性二人は、先月奈良の新薬師寺で見た十二神将、あるいはそれに踏みつけられる邪鬼を連想した。ありがたいものを拝めた、という感じ。圧巻だった。

29日は会場付きのボランティアをやった。パフォーマンス中は通行路の確保などをしなくてはならないので、上演中の演技は部分的にしか見ることができなかったのだけれど、自分が担当した会場でもいくつかの印象に残るパフォーマーがいた。自分で見るときはパントマイム系の芸を見ることが多いのだけれど、会場付きボランティアをやっているとこれまで自分が見ていなかったタイプの芸も見ることができた。ジャンルが「リズムペイント」となっているユキンコアキラの芸は今回初めて見た。リズムボックスの音に合わせて、踊り、絶叫しながら、即興で絵を描くというパフォーマンス。三十分の時間の間に三枚の絵を完成させる。寄席芸の紙切りのバリエーションとも言えるが、動きが激しくて、描画中のパフォーマンスは相当エキセントリック。描写に注がれるエネルギーは馬鹿馬鹿しいほど大きく、激情をたたきつけるような身体表現はちょっと狂ったようなところもあり、そこが感動的でもある。こんな芸を大道芸で成立させていることに感心してしまった。

ボランティアの休憩時間に加納真実のパフォーマンスを見ることができた。開演前十五分には、彼女の上演場所には人が既にたくさん集まっていた。各地の大道芸フェスの常連である彼女はファンも多く、大道芸の女王の風格がある。今回は「仮面舞踏会」という今まで見たことのないネタが含まれていた。能面(といってもプラスチックの安物)をかぶって加納真実がまず一曲踊る。踊り自体は単純なパターンを組み合わせたもので、加納まみならではの奇妙さはあるとはいえ、特にどうってことはない。一曲踊ったあとて、今度は観客から一人を選び、その観客にも仮面を被せ、一緒に踊るように強いる。観客は加納真実の動きを見ながら、能面をかぶって踊る。これが終わるとさらに二人、観客を呼び込み、同じように能面を被せて、踊らせる。単にこれだけの芸なのだけれど、複数の人間が能面をかぶって、ひょこひょこと間抜けに踊るさまの何とおかしいことか。不思議なことに、舞台に引っ張り込まれ、仮面をかぶらされてしまうと、素人の観客もけっこうちゃんと踊ってしまうのだ。単純なパターンの組合せに過ぎない振付がとてもよくできていて、集団仮面踊りになるとその効果が明らかになる。人で一杯の会場が大いに盛り上がる。いや−、本当に可笑しなパフォーマンスだった。私も一緒に踊りたかった。

担当していた会場では、バロンのパフォーマンスも印象に残った。ウクレレ伴奏で歌う芸人によるボードビル芸。高円寺では常連だが、私は観たことがなかった。まず見た目がいい。えらの張った愛嬌のある少年っぽい顔、アルレッキーノのような派手な色のつぎあてのジャケット。ウクレレ伴奏の歌を聞かせるのを軸に、タップダンス、ジャグリング、観客と一緒に行うゲームなどを組み合わせて、三十分を構成する。一つ一つのパートには特に目新しいところはないのだけれど、観客を引き込む空気の作り方が上手だ。派手で強引な手段ではなく、自然にリラックスした雰囲気のなかで彼の作るファンタジーのなかに観客を引き入れる。小さな子供の観客も多く、幼い子供の気持ちも掴むのもうまい。夕暮れのなかの紙芝居を懐かしむような空気を味わうことのできるバラエティ・ショーだった。

高円寺びっくり大道芸は狭い路地のような場所で行われることが多く、大混雑になるのが難点だけれど、その分、親密な雰囲気を作りやすいというのが利点かもしれない。観客の反応もいい。小さな子供から大人まで、幅広い観客が楽しむことができるのも大道芸のよいところだ。来年は高円寺びっくり大道芸も第五回となるが、今年で地域行事としてもしっかり根付いたのではないだろうか。天気がよければ、今年以上のすごい人手になってしまいそうだが。