閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

白瀧寄席 立川志の春ひとり会

  • 会場:赤塚 白瀧呉服店
                      • -

赤塚の白瀧呉服店で催された立川志の春ひとり会に娘と行ってきた。「てんしき」と創作、「藪入り」の3席。客は10名ほど。親密な雰囲気のなか、風格ある呉服店の座敷で、ゆったりと落語の時間に浸ることができた。戦前、東京の街の至る所にあった寄席はこんな雰囲気だったのではないだろうか。和室の薄暗い照明のなかでの落語会だった。
シンガポールでの落語会の話、志の輔のもとでの修行の話もとても興味深いものだった。よかったなあ。
シンガポールでやった英語落語の話が面白かったので、以下まとめておく。
志の春自身は英語落語については、落語を英語に訳してしまえば半分くらいしか伝わらないのではないかと懐疑的だったそうだ。そんな中途半端なものを海外で伝えてもという思いがあったと言う。しかしシンガポールで各国の様々な伝統的語り部たちが集まる公演なかで、志の春の英語落語は、日本でのこれまでの口演でもなかったほどの、大きな笑いを巻き起こしたと言う。笑いのつぼが日本人とは異なるに違いないとおそるおそるやってみた、壺が違うどころか、笑いの壺だらけ。いたるところでどっかんどっかん大きな笑いが起こるという状態だったとか。他の伝統的語り部の話が神話や英雄譚などの物語系だったのに対し、落語だけが馬鹿馬鹿しい滑稽話というのも新鮮だったようだが、一人の演者がほぼ対話形式だけで語っていくというスタイルも珍しかったようだ。志の春曰く、「自分がやったからうけたわけではなくて、おそらく他の誰かがやっても同じくらいうけただろう」。英語で外国人に話す落語がこれだけ受けてしまったという事実に、志の春は落語の笑いの普遍性というものを見つめ直すことになった、という。
志の春は落語は、その風貌と雑談での語り口もそうなのだが、まっすぐ、まっとうな感じがあって聞いていて気持ちがいい。