閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

病は気から

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病は気から  ? SPAC

  • 潤色・演出:ノゾエ征爾
  • 原作:モリエール (「モリエール全集」臨川書店刊/秋山伸子訳より)
  • 舞台監督:内野彰子
  • 照明デザイン:大迫浩二
  • 舞台美術:深沢襟
  • 衣裳:駒井友美子
  • 音響: 西沢理恵子、山粼智美
  • 照明操作:神谷怜奈
  • 舞台:山田貴大
  • 演出助手:渡辺明
  • 出演:阿部一徳、石井萠水、泉陽二、大高浩一、川上友里、榊原有美、

本多麻紀、牧山祐大;内野彰子

  • 劇場:東静岡 静岡芸術劇場
  • 評価:☆☆☆☆★
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17世紀フランス古典主義演劇を代表する喜劇作家であるモリエールの遺作の上演。フランスで最も偉大な劇作家のひとりであるが、日本での上演機会はあまり多くない。『病は気から』はもともとモリエールと作曲家シャルパンティエと共同で作った舞踊付き音楽劇だったが、今日では劇の本筋とはほとんど関わりを持たない音楽・舞踊の場面は省かれ、劇作品として上演されることが多い。
モリエールの芝居はどれもよくしっかりと構築されていて、今読んだり、見たりしてもごく普通の感覚で楽しむことができる普遍性は持っているのだけれど、筋立て、人物造形ともパターン化しているところが私にはつまらなく感じてしまう。また喜劇は17世紀フランスのブルジョワの風俗が描写されているため、今の日本人がやるとどうしてもわざとらしいバタ臭さが鼻につき、表現に説得力を欠き、しっくりこないことが多い。

ノゾエ征爾の『病は気から』は、様々な奇抜で独創的なギミックを効果的に導入することで、モリエール劇の日本での上演の可能性を切り拓くものとなっていた。私がこれまで見たモリエールの舞台でも出色のもの。ノゾエ演出恐るべし。特異なギミック満載の独創的舞台だが、原作の構造、本質はしっかりと伝えている。
宮城聰さんが役者として出演するはずだったが、私が見た回は宮城さんが急な事情により出演しなかった。そのかわり、元宝塚女優だという変わり種の舞台監督内野彰子さんが宮城さんの代演をしていた。この内野版はとてもよくできていて、宮城さんの休演を十分にフォローする内容になっていたと思う。劇が始まる前に、出演する役者たちを観客に見立て、舞台見学ツアーを行う。そのツアーの過程で劇の解説を行うというメタ演劇的構造を作り出していた