閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

お母さんの十八番

インフォメーション|アジア舞台芸術祭

  • 演出:朴章烈(パク・チャンニュル/ソウル)
  • 共同脚本:朴章烈(パク・チャンニュル)、李善姫(イ・ソンヒ)
  • 翻訳:洪明花(ホン・ミョンファ)
  • 出演:下総源太朗、那須佐代子<青年座>、奥野晃士<SPAC>、根岸絵美<アマヤドリ>、伊比井香織
  • 劇場:池袋 東京芸術劇場 シアターウェスト
  • 上演時間:80分
  • 評価:☆☆☆★
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母親が死ぬ場面から始まる。その死に方はあっけない。掃除をしていたときに、棚に置いてあった鉄アレイが頭にあたって死んでしまうのだ。
残された家族、そして弔問に訪れた母親のプラトニックな不倫の相手による回想で話は展開する。夫は新聞にあまり出来がいいとは思えないコラムを書いているらしい。妹は引きこもりで過去に自殺未遂を起こしたことがある。姉は就職活動中だがうまくいっていないようだ。母親の友人はかつては歌手で、今は芸能プロダクションのようなところで働いているらしい。それぞれが母親の死を悼み、その思い出を回想するのだけれど、どの人物もエキセントリックで母親への哀悼よりはむしろピントのはずれた喜劇性が強調されているような感じがする。死んだ母親は、「霊」となって各場面に立ち会い、突っ込みを入れたりする。また回想場面を演じる。とらえどころのない奇妙な物語で、各人の内面というのが奇矯な言動によってカモフラージュされているかのように思えた。お母さんの十八番であった山口百恵の『いい日旅立ち』の歌でしんみりとしめくくると思えば、最後は母の生前、おそらく事故死する直前の日常の描写が再現される。その様子はおよそ散文的で情緒に欠ける。退屈な日常にうんざりした口調でぐちをこぼしたところですとんと終幕。明るい虚無主義が漂う不条理喜劇となっていて、私は楽しんで観た。
お母さん役の那須佐代子さんが綺麗だ。私は好きな顔立ちだ。