第十六回みつわ会公演 久保田万太郎作品 其の二十三
- 演出:大場正昭
- 美術:中嶋正留
- 照明:熊田勝博
- 効果:秦大介
- 舞台監督:藤森條次
- 出演:磯西真喜、菅野菜保之、児玉真二、大原真理子、田口守(『雨空』);浅利香津代、中野誠也、小山典子、世古洋丸(『三の酉』)
- 上演時間:2時間(休憩15分)
- 評価:☆☆☆☆
- 劇場:新馬場 六行会ホール
久保田万太郎作品の上演を続けるみつわ会の公演を見にいった。毎年この時期に二本ずつ公演を行うらしいが私が見るのは今回がはじめて。
大正9年の作である「雨空」と昭和31年に発表された小説「三の酉」を舞台化した作品の二本立て。上演時間は両作品とも40分ほどだった。
どちらも地味で静かな芝居だったけれども、しみじみとした抒情にひたることのできる心地よい時間を過ごすことができた。しかし「雨空」はしみじみしすぎてちょっと落ちた。
「雨空」はリアルに作られた下町家屋の美術が印象的だった。室内は白熱灯のオレンジの光にぼんやりと照らされている。互いに思いを寄せながら、すれ違いになってしまうもどかしさと悲しさが、繊細な台詞のやりとりから浮かび上がる。
「三の酉」は赤坂芸者のひとり語りによって劇的幻想が舞台上に広がる。主人公のおさわの軽妙でユーモラスな語り口、語り手である「ぼく」とのやりとりの向こう側に、彼女がたどった悲壮な人生が透けて見える。主演のおさわ役、浅利香津代の芝居が達者で、仕方話の世界に自然に引き込まれてしまった。