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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

効率学のススメ

演劇

http://nnttplay.info/with3/kouritsu/

  • 作:アラン・ハリス Alan Harris
  • 翻訳:長島確
  • 演出:ジョン・E・マグラー John E McGrath
  • 美術:二村周作
  • 照明:小川幾雄
  • 音楽:後藤浩明
  • 音響:加藤 温
  • 衣裳:伊藤早苗
  • ヘアメイク:川端富生
  • 映像:冨田中理
  • 舞台監督:大垣敏朗
  • 出演:豊原功補、宮本裕子、田島優成渋谷はるか田島令子、中嶋しゅう
  • 評価:☆☆☆☆

効率化の名の下にリストラの危機にある研究所スタッフの当惑、抵抗、変化を軽やかでスタイリッシュな雰囲気の中で描く秀作。早稲田大学による非常勤講師契約5年期限騒動の渦中にある私には身につまされる内容。刺激的で得るものが多かった。まさにこれからこう振る舞えという指針を与えられたように思う。 演劇ってやはりいいものだな。宮本裕子を見るのは久々だった。彼女はこの作品で信じられないほど美しく、魅力的だった。渋谷はるかさんが劇中では「6.5」の評価、これはちょっと許せない。酷い脚本だ。

医薬品開発研究所が舞台。無能で放任主義の上司1名と有能で美しい女性研究員1名、有能だかどうかわからない若い男女の研究員2名がそこで働いている。この研究所が会社のリストラの標的となった。効率主義哲学の権化のような外部コンサルタントがこの研究所にやってきて、厳格な業務効率チェックを行う。所員たちは自分がリストラの対象となることに戦々恐々として日常業務に手が着かない。 

自分の今の状況もあって心にしみる作品となった。でもラストはちょっと甘く、通俗的すぎるかな。甘くてよかったのだけれど、自分としては。 

美術セットが変わっている。舞台は中央で、長方形。それを客席が取り囲むかたち。舞台外側は白い光沢のある床の回廊になっている。研究所は中味が四方から丸見えで、細いスチールの柱で囲まれたなかにある。5メートル四方の正方形。事務机や床など、全ての美術が白と黒とスケルトンのモダンなデザインである。1メートルほどの幅の細長い白い幕が二階席のところにはかけられ、その白幕がぐるっと劇場を一周している。その白い幕はスクリーンとなって様々な映像が映し出される。 音楽のセンスもいい。 

面白い作品だし、テーマもアクチュアル、キャストも演出も美術もいい。でも日本では無名の外人作家の新作、「アイドル」ぽい役者が出ていないとなると、集客は厳しい。チラシのデザインが今ひとつ。あと新国立、A席が4000円以下だったらいいのにな、と思う。

「効率学のススメ」のアフタートークでは、観客からの質問で英国人演出家に対して「シェイクスピアの影響を受けてますか?」という質問が出た。うおっ、凄い質問だ。演出家はこの大質問を茶化すことなく、誠実に丁寧に返答している。偉い。『効率学のススメ』を制作したナショナル・シアター・ウェールズは劇場を持たず、ウェールズ国内のいろいろな場所(軍事キャンプ、民家の軒先)などで出張公演を行っている非常にユニークな国立劇場。

パンフに劇場を持たない国立劇場、ナショナル・シアター・ウェールズ(NTW)の活動の詳しい解説があった。常勤スタッフは18名、専属俳優はいない。ウェールズのみならず世界各地で異なる演劇手法の作品を年間15作品前後制作。ナショナル・シアター・ウェールズ(NTW)、作品制作は上演される地域コミュニティーに深く入り込んで行われる。11年の復活祭には南ウェールズの都市ポール・タボットで『受難劇』を上演し12000人の観客を動員。http://nationaltheatrewales.org/

劇場なし、専属俳優なしというのは、予算がないがゆえだろうが、劇場という場から解放され、地域と世界のあらゆる場所に演劇公演を核とするコミュニティーを作り出すNTWの活動はとてもユニークで興味深い。日本の公共劇場でも真似するところが出ないかな。埼玉県宮代町で高野竜氏がやっている平原演劇祭は、NTWの活動と近いように思う。「子供と地域」がテーマ、劇場でなく古民家や野外での公演が主、食べ物が出たりする、芸能的だらだらだけど前衛で詩的。宮代町はこれを公営化すればいい。 http://htl.li/jY4k3