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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

平田オリザ「演劇入門ワークショップ」@目黒パーシモンホール

パーシモン・パレット・プログラム2013 演劇ワークショップ

目黒区のパーシモンホールでは、平田オリザによる中高生向きワークショップが行われている。この様子は昨年公開された想田和弘の観察映画『演劇』のなかでも映し出されていた。 このワークショップにこの春、中一になり、演劇部に入った娘を送り込んだ。面倒くさい、何かいやだ、とかぐずぐず言っていたけれど、とにかく私が興味あったので半ば無理にお願いしてという感じで。 

 

ちなみに娘は「平田オリザって(高野)竜さんが嫌いだって言ってた人だよね」と受講前に言っていた。4月に平原演劇祭2013年第1部に行った時に、公演後、高野さんの家で平田オリザのことを話題にしていたのかもしれない。それを聞いていたのだろう。 

「あ、そう? そんなこと言ってたっけ? まあでも、竜さんより平田オリザのほうがはるかに演劇人として有名だし、ちゃんとした人だよ」と答えておいた。 

 

ワークショップは休憩時間も含み、13時~20時半までの6時間半におよぶ長いものだった。映画『演劇』では保護者がワークショップの様子を見学していたので、私もその様子を見学したかった。しかし6時間半ずっといるのはさすがに迷惑だし、見学だけだと長すぎる。この日、私は午前午後と用事があったので、パーシモンホールに18時半に到着した。ワークショップの場所は小ホールだが、扉が閉まっていて部外者が勝手に入ってはいけないような雰囲気だ。ホールの椅子に座って終わるまで待っているしかないかなと思ったが、それでも2時間待ちっぱなしは長いし、ここまで来た意味がない。 

ホールの受付に見学できないか問い合わせると、ちょうどそこにワークショップの担当者が通りかかって、中に入れてくれた。 

受講生は30名ほどでかなり多い。男子が半分弱。保護者で見学しているのは私だけのようだった。講師の平田オリザの他にアシスタントが数名いた。 

19時頃から終わるまで、ホールの端っこからワークショップの様子を見学した。 

 

彼のワークショップは私も受けたことがあるのだけれど、やはり熟練の職人芸で、巧い。発展性のあるプログラムの構成、進行のリズムの作り方、タスクの一つ一つに発見がある。教育者としての資質も超一流だと思う。天才。私にはこんな授業はできない。この完成度に達するために彼はどれくらいの試行錯誤を繰り返したのだろう、と思う。その手際のよさ、説明する際の言葉の選び方、そして内容の密度に感心し、ほれぼれしながら見学する。 

富も名声も手にしている平田オリザが超多忙のなか、中高生対象のこうしたアウトリーチ活動を自ら行っているというのはやはりすごいことだと思う。平田の「演劇」活動が包括するもののスケールの大きさには圧倒される。 

 

終わったあと、娘に感想を聞くと、やはりものすごく面白くて、充実した体験だったそうだ。無駄に感じられる言葉や作業が一切ない。あれだけの情報量なのに、退屈することはなかったとのことだった。受講した30名の半分くらいは高校生だったが、中一も多かったという。うちの娘のように遠くからわざわざ電車に乗って受講しにくる人はいなかったのではないか、と聞くと、そうでもなく、けっこう遠くからも受けに来ていたとのこと。 中学生はおそらくほとんどが親に促されての参加だろう。

高校生は高校演劇部の人がほとんどのようだ。演技が上手な人が多かった。講習の最後の質問もレベルが高い。 

「台詞がない役柄がどうしても手持ちぶさたな感じになってしまう。台詞がないときにはどうすればいいのか」とか「自分が演出するとき、役者に『言い方』を指示してしまうことが多いのだけれど、うまくいかないことが多い。どういう指示の出し方をするのが効果的なのだろうか」など。平田のアドバイスは的確で具体的だ。前者に対しては小道具を使うやり方など、後者には高校生だと俳優は他者を演じきることができるほど器用でないことが普通なので、役に俳優を押し込むのではなく、それぞれの俳優の持ち味を利用して、誘導していくやり方など語っていた。 

 

「変な比較だけど」と娘が言う。「高円寺の大道芸のときの説明はだらだらしていて聞いていて退屈してしまうけれど、平田オリザの説明はまったく無駄なところがないし、ずっと聞いていても退屈しない。話すことすべてに意味がある感じ」とのこと。 

 

ここでまた高野竜さんの話題をふってみる。「二人を比べてみてどうだ?」と。私はつい対極的なタイプの演劇人として、高野さんと平田オリザを比べたくなるのだ。

 

すると「平田オリザはまっすぐ、必要なことだけを上手に伝える。竜さんは遠回りして、直接には伝えない感じ。竜さんが平田オリザが苦手というのは何となくわかる」という返事だった。うーん、なるほどと思ってしまった。