shelf vol.15
- 作:三島由紀夫
- 構成・演出:矢野靖人
- 出演:「班女」 川渕優子 春日茉衣 森祐介 たけうちみずゑ (chon-muop)
「弱法師」 森祐介 川渕優子 春日茉衣 日ヶ久保香 小川敦子 和田華子 平佐喜子(Ort-d.d) 櫻井宇宙 - [照明] 則武鶴代
- [音響]荒木まや (Stage Office)
- [衣装]竹内陽子
- [美術]山上健 (山上建築設計)
- [舞台監督]佐藤恵
- [宣伝美術]オクマタモツ
- [制作]薄田菜々子
- [制作助手]加登聖子、中村みなみ
- 劇場:日暮里d-倉庫
- 評価:☆☆☆
開場は開演15分前。劇場に入ると役者は舞台に既にいた。そして開演まで20分ぐらい(5分おしになった)ずっと不動のまま。
語り役の女が中央前方にいて、彼女の語りに従って話が進行していくという趣向になっていた。語りの女は始終同じ位置にいて動かない。観客席はひな壇で舞台を見下ろすかたちになっている。円上にまとめられた語り女の長大なスカートが美しい。
劇場内で響き渡る声が美しい。時折、語り女と登場人物の台詞がユニゾンで重なり合い、合唱のような効果を作り出していた。劇場内で複数の声が共鳴するこの合唱的趣向はもっと大胆に取り入れてもよいように思った。上演時間は35分ほど。
「弱法師」では俊徳と調停委員の桜間級子以外の人物は、俊徳を取り囲むコロスとして表現される。コロスは俊徳の周囲を回りながら、舞踊的に動き、歌うように台詞を語る。
両作品ともシンプルで象徴的な美術とシャープな照明、そしてその暗くストイックな背景のなかで浮かび上がる人物の対比が、美しく緊張感あるスペクタクルを作り出していた。台詞の音楽的処理についてはまだ工夫の余地がありそうだ。もっと大胆に取り入れてもいいかもしれない。声はとてもいい感じで響いていた。
役者への負荷はかなり高い演出に思えた。そして観客である私も我慢を強いられた。こちらの体調の問題もあったのだとは思うけれど、強烈な誘眠作用の舞台だったのだ。落ちるのを堪えるのが大変った。苦行難行の90分。
演出プランはよく練られていて、その狙いはよくわかる。舞台としてもよくできているとは思うのだけれど、世界に入っていけない。入っていくことを拒む根本的な欠落があるような気がする。単に私と相性がよくないだけかもしれないが。こういう世界を作り出したいのだろうなという演出家のねらいはよくわかる。