閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

オーウェン・サウンド《サマー・フォーク・フェスティバル2013》

38th Annual Music & Crafts festival 

Summer Folk 2013 : Fork on the Water. Kelso Beach Park, Owen Sound

   8/16(金)にモントリオールでの語学教育研修の全プログラムが終わり、翌日早朝にモントリオールを発ち、トロントの北150キロのところにあるオーエン・サウンドという町に向かった。ヒューロン湖畔の人口2万人の町でこの週末三日間にわたって行われるフォーク音楽フェスが目的である。 

 目当てのミュージシャン、スコットランドの双子バンド、ザ・プロクレイマーズの出演が8/17(土)の14時半からと22時からだったので、これに間に合うようにしたかった。このフェスには50組近いミュージシャンが参加しているが、私が知っているのはザ・プロクレイマーズだけである。ザ・プロクレイマーズはカナダ・ツアー中で、16日(金)にはトロントでライブを行っている。本当はトロントのライブも聞きたかったのだが、研修のスケジュールとうまく合わなかった。 

 モントリオールからトロントまでは550キロの距離があり、飛行機で1時間ぐらいかかる。トロントからオーエン・サウンドまではバスしか交通機関がない。バスと言っても公共交通機関というよりは、乗り合いタクシーみたいなものだ。17日(土)14時半までにフェスティバル会場に到着したいとなると、朝6時にモントリオールを出る飛行機に乗らなくては間に合わない。バスの本数が少ないのだ。飛行機は国内線だが、勝手がわからないため、出発90分くらい前には空港に到着しておきたい。となると宿舎を出るのは午前4時頃となる。金曜夜は研修最終日ということで夜遅くまで研修生と過ごしたので、モントリオール出発の日は徹夜となってしまった。飛行機とバスのなかで多少眠ったとはいえ、体力的にちょっときつかった。オーエン・サウンドに到着したあと、バス停から宿まで1時間ぐらい、炎天下(といっても日本の猛暑を思うとたいしたことはないが)、スーツケースを転がしながら歩かなければならず、バテバテになってしまった。昼飯はビスケット数枚。宿に着いたのが午後1時すぎ。30分ほど休憩して、フェスティバルの会場に向かう。フェスティバル会場はヒューロン湖岸の公園である。地図を見るとすぐ近くのような気がしたのだけれど、歩くと宿から30分ぐらいかかった。 

 プリントアウトした電子チケットを入口で見せると、ブレスレットをくれ、これが入場証代わりになる。私は土・日二日間有効のチケット。値段は二日で一万円弱とけっこう高い。会場内には大きさ、形態が異なる8つの仮設ステージが設置されていて、金、土、日の三日間にわたって昼前から深夜までコンサートが行われている。音楽だけでなく、工芸品などの職人のブースもあり、子供たちを対象とした音楽や工芸のワークショップも行われていた。今年で38回目。 

http://summerfolk.org/ 

 また飲食物の屋台も多数出ている。屋台の食べ物はレベルが高く、おいしかった。値段も若干割高ではあったが。 

 規模はかなり大きいけれど、フェスの雰囲気は手作り感があって、とてもフレンドリーでくつろいだ感じ。町のお祭りといった感じだ。規模的には、三茶や高円寺の大道芸フェスティバルくらいか。周り方もウェブページやパンフで事前に目当ての芸人のステージをピックアップして、それを中心に移動の仕方を考えておくというのが正解なのだけれど、今回ははじめてで勝手がわからず、見られなくてあとになって後悔というパターンとなってしまった。仕方ない。 

 

 メインステージは夕方から夜にかけてコンサートが行われる会場中央に半円階段劇場なのだけれど、昼前にはシートや折りたたみ椅子で場所取りがされていて、私が夕方になって会場に行ったときには後方に設置された100席ほどの仮設観客席しか座る場所は残っていなかった。 

 

 さてまずザ・プロクレイマーズの最初のステージ。14時半開始だったが私が到着した14時には客席は満杯。この会場はアルコールを含む飲食がOKで、テント張りの会場の下は長テーブルも置かれている。つまみを食べ、一杯やりながらコンサートを楽しむという会場だった。開演直前に何とか隙間を見つけ、地ベタに座って見た。日中の日差しは強くてとてもテントの外では長時間見ていられない。 

 

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 ザ・プロクレイマーズ最初のステージは、アコースティク・ギター伴奏のみの編成、つまり双子兄弟二人だけで、3組の他のミュージシャンとの共演だった。4組で一曲ずつ順番に歌っていくというもの。共演者のなかではMaria Dunnというアイリッシュ・トラッド系の女声歌手がなかなかよかった。全体的にカントリー系のミュージシャンが多かったようだが、私はカントリー、ブルーグラス系の音楽はまったく知識がないので、みんなアイルランド・トラッドっぽく聞こえてしまう。 

http://summerfolk.org/performers/maria-dunn/ 

 生のザ・プロクレイマーズ、二人のコーラスのはもりが美しく、そして力強く、びんびん響く。ただ一曲ごとに他のミュージシャンに交代というのが物足りない。1時間半ほどでこの組合せでのパフォーマンスは終わる。 あとでパンフレットを見ればこのあとも同じ会場に残っておけば、モントリオールで活躍する女性ギタリスト・シンガーのCécile Doo Kinguéも聞けたのに。事前にミュージシャンの情報をちゃんとチェックしておかなかったので聞き損ねる。 

 ザ・プロクレイマーズの昼のショーが終わった後、どうにも眠たくて、湖岸の芝生にある木陰で2時間半ほど昼寝してしまった。ヒューロン湖からそよぐ風が気持ちいい。 

 

 

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 夜は6時からメインステージでのコンサートが始まる。ザ・プロクレイマーズの出番は夜10時頃からだけれど、夜7時頃会場に行くとすでに席はおおかた埋まっていた。一番後方に設置されていた仮設階段客席になんとか座る場所を見つける。ステージからは大分遠い。 日中は陽光が照りつけていて暑く、Tシャツ一枚で十分だったのだが、日が落ちると急に寒くなった。売店でフード付きのトレーナーを買う。 夜のステージはだいたい一組のミュージシャンが一時間の持ち時間で交代していく。 知らないミュージシャンばかりだったが、キューバ出身の黒人ギタリスト・歌手のAlex Cubaのパフォーマンスがよかった。音楽は洒落たラテン系ポップスという感じ。 

 目当のザ・プロクレイマーズはメインステージのとりで夜10時からの出番。うーん、思ったほどよくなかった。いや、十分によかったのだが。 一つは時間が1時間というのが物足りない。また会場観客はフェス自体を楽しみに来た人たちで年齢層が幅広い。のりが今一つ大人しいのだ。あとは音量のバランスが悪くて、ボーカルがきっちりと会場に響かなかったのも残念だった。さらにステージから遠い場所にいたというのも。多彩なミュージシャンと観客が集まるフェスの雰囲気はいいものだけれど、ザ・プロクレイマーズのソロ・ステージで、できればスコットランドで一度体験したいものだ。 それでもヒット曲の《500マイル》はやはり大いに盛り上がった。 

 夜の11時にメインステージのショーが終わって、この後深夜1時まで別のステージでは、翌日聞いて非常に気に入ったモントリオールのグループ、CanaillesとCécile Doo Kinguéのショーがあったのだけれど、これに気付いたのは後日。この深夜のライブは相当盛り上がったらしいが。もっともこの日は移動疲れがあって、これが限界だったと思う。フェス会場から宿まで、暗い夜道を30分以上歩かなければならなかったし。 

 翌日は8時過ぎに起床。ステージが始まるのは昼頃からなので、朝ご飯のあとは、町の中心部を散歩した。中心は一キロほどの2本の通り。高いビルはもちろんない。劇場が一つある。日曜なので休みの店が多かった。ぶらぶら町を散策していると、午後1時を過ぎていた。昼ご飯はフェスの会場で買って食べた。ぐずぐずしてしまったので、結局Cécile Doo Kinguéのステージを見る機会を失ってしまった。 

 パンフを昨日呼んで目をつけていたモントリオールのグループ、Canaillesのステージは見ることができた。アンプを通さない生音のコンサート。湖岸の砂浜にある小さな会場で1時間。カントリーっぽい音楽をベースに、さまざまな民族音楽的響きをごたまぜにしたような音楽で、歌詞はフランス語。まさにここでこういうのを聞きたかった、といういかにもケベックっぽい混交的ジャンルのバンドだった。野暮ったさも味になっている。本人たちは「ケイジャン音楽」と言っていた。 大いに満足する。 

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このあと、LookUP Theatreという女性のパフォーマー集団による空中演技を中心としたサーカスを見たがこれはよくなかった。演技レベルが高くないし、構成もよくない。午後の最後は、Huble DivinesThe Strumbellasという二つのバンドのステージを見た。 どちらもフィドルバンジョーといったカントリー的な楽器を編成に取り入れたシンプルなロック。Humble Devinesのヴォーカルのお姉さんが色っぽくてよかった。 

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 夜のステージは2つのバンドだけを見て帰った。次の日が朝6時半に宿を出発だったので、遅くまで残っているのが心配だったのだ。それにけっこう疲れていた。あとでフェスの報告をブログなどで読むと最後の盛り上がりがとても楽しそうだったので、ちょっと後悔したが、次の日のバスでのトロント行きでもかなり消耗したので、7時過ぎに会場を出て正解だったかもしれない。 早めに会場を出たおかけで、公園の入口にあるフィッシュ・アンド・チップス屋でおいしいフィッシュ・アンド・チップスを食べることもできた。 

 また来る機会があるだろうか。オーエン・サウンドは小さくて美しい町だった。人もみな親切で感じがいい。フェスティバルの雰囲気もフレンドリーだ。また来て見たいなと本当に思う。今度は事前にウェブとパンフで出演ミュージシャンをしっかりチェックして、最後のステージが終わるまで会場にいたい。