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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ロリポップチキン『さよなら、ミアちゃん!』

演劇

http://lollichicke.jugem.jp/

  • 作・演出:長谷川慶明
  • 舞台監督:田嶋太一
  • 音響:下重博資
  • 照明・振付:脇山萌(実験劇場)
  • 映像:羽場雅希
  • 出演:赤本颯、折田皇明(活劇☆ちゃーと5)、山本沙羅(てあとろ50)、長谷川慶明、みゆちむ(みうちむちぇりー)、鈴木玲、脇田美帆
  • 劇場:高田馬場 プロトシアター
  • 上演時間:70分
  • 評価:☆☆☆

武蔵大学人文学部在籍中の長谷川慶明の演劇ユニットの第二作。7月に最初の作品(本当は3月末に立ち上げ公演の予定があったが中止となった)、そして10月に第二作、さらに12月末に第三作と立て続けに公演を打つ。ロリポップチキンは長谷川の個人ユニットだから、この短い期間に三作立て続けとなると相当な負担になっているはずだ。スタートダッシュ、最初から全速力でやってしまえ、という覚悟はすごい。若いエネルギーを感じる。

第一作となる『始発電車は君の街へ』は、どろどろに甘く切ない物語がガラクタの集積のような演出とマッチし、さらにキャストに恵まれたこともあって思いの外(といっては失礼だが)大好評だった。幻に終わった三月の旗挙げ公演のリベンジを遂げることができた。

二作目の『さよなら、ミアちゃん!』、作・演出家の思いが空回りして、ほとんど破綻しかけているかのようなちぐはぐで暑苦しい芝居だった。作・演出家が出演者となり、それもかなり出番が多かったためか、演出的なバランスが悪かった。具体的には登場人物のふるまい、話し方がみな攻撃的すぎて、ひどく耳障りであっただけでなく、単調になっていた。

 

劇構成は面白い。三幕構成だが、序幕となる第一幕を長くとり、二幕、三幕が短いという不均等な構成。二幕、三幕は短いながらどんどん加速し、圧力が高まる感じであったが、もっと徹底して突っ走って欲しかった。

 

美術、照明などビジュアルについては、予算もないのだろうが、工夫の余地が大いにある。

 

内面が分裂して、分裂した人格が人形のかたちをとって複数の登場人物となり、最終的に「私」を苛なむ。「私」は己の分身を制御することができず、最終的には破滅へと追いやられるというのはありがちな話かもしえないが、これをモノローグ劇から複数の人物による演劇として表現するというアイディアはとてもよいと思う。

しかし「ひきこもり」、精神病、家族の解体といったメジャーなテーマは脚本と上演のなかで深めることができず、その表現は紋切り型に感じられた。リアルの絶望感、救いようのなさはこんなものではないだろう。作家だったら残酷に無慈悲に、リアルに向き合い、それを作品化する覚悟が必要と思う。

 

完成度の点からは、脚本も演技も大いに問題があると公演だと思う。しかし個人的には作・演出家のもがきぶりの誠実さを確認することができて、うまくいっていない部分は多い作品にも関わらず、見終わったときの感じは悪くなかった。

 

次回作も見に行く予定。