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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

大道芸ワールドカップ in 静岡 2013(11/3)

大道芸ワールドカップ3日目、日曜で混雑がすごいのでどれを回るかを慎重に選ばなくてはならない。ワールドカップ部門に出演する海外招聘アーティストはやはりもう1、2組は見ておきたいと思った。ガイドブックを検討し、ベルギーのエラスティックを見ることにした。目当てのアーティストをよい位置で見るには、少なくともその前の演目が始まる前には演技ポイントに移動しておいたほうがいい。

3日の最初に見たのは、エラスティックの前に同じ会場でパフォーマンスを行うMr. BunBunだった。Mr. BunBunは私はこれが初見だった。

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演目は変身ヒーローもののパロディ。色々な小ネタ、観客参加の仕掛けを交えた脚本の構成が優れている。25分しっかり楽しむことができた。

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目当てのエラスティックだが、これは観客いじりを中心としたコメディだったが、日本人の観客ののりをいまひとつしっかりつかむことができていない。去年のワールドカップ部門で招聘されていたカナダのジョニー・フィリオンが似たようなタイプの芸で、私は大好きだったのだけれど、エラスティックはフィリオンに比べると狂気じみたつきぬけかたが弱いように思った。芸人自身も観客のなかに思いきって飛び込めない感じだった。

エラスティックのあとは、駿府公演の露店で昼食を取り、それから紙麿呂のマジックを見た。

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紙磨呂のマジックは、パントマイム的な動きがしなやかでとても美しい。真っ赤な衣装と白塗り顔の組合せは、大道芸祭の人混みのなかでも鮮烈でよく目立つ。リングや名前と関係のある紙を使ったマジックを組み合わせて、物語性を感じさせる幻想的な舞台を作っていた。マジック自体は今回のような野外の広い会場では若干地味に感じられた。

私は大道芸のなかではパントマイムが一番好きなので、これまで見たことのないパントマイム・アーティストを見てみようと思った。紙磨呂のマジックのあとは、ブラックのヨーヨーのパフォーマンスを見て、同じ会場で引き続き池田洋介のパントマイムを見た。池田洋介のパントマイムを見たのはこれが初めてだったのだが、これが本当に素晴らしいものだった。

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作り込まれた音源に従って、タイミングを合わせ抽象的な表現を連ねていく。黒づくめの衣装での演じられる無機的でクール、そしてカッコいいパントマイムだなと思ってみたいたのだけれど、最後の演目『Hello Goodbye』でやられた。ビートルズの曲の歌に合わせて、池田洋介が移動する。その移動する様々な場所で、歌の歌詞がタイミングよく現れる仕掛けが実に見事だった。終演後は思わず「ブラボー」と声をあげてしまった。

池田洋介のパフォーマンスのあとは、場所を青葉のポイントに移動して、タイからやってきたパントマイムの男女デュオ、ミュートのパフォーマンスを見た。これも非常によかった。

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オーソドックスなパントマイムだが、技術が高い。そして何よりこの男女二人組がとても愛嬌があって可愛らしいのだ。ショーが始まるとすぐに観客の心を惹きつけた。観客参加の脚本もとてもよく練られている。タイではとても人気のあるコンビだそうだ。

素晴らしいパントマイムを連続して見たので、またさらにパントマイムを見てみたくなった。シルヴプレはこの日、長編の傑作『ビバーク!』を別会場でやっていたのだが、時間が合わず観に行くことができなかった。バーバラ村田が青葉ポイントに近い札の辻でパフォーマンスを行っていたので、そちらを見に行く。演目は一昨日駿府公園の会場で見た「月と踊り子」だったが、いろいろ細かい変更を加えたのか、印象はかなりちがったものになっていた。一昨日より完成度が格段に上がっていた。

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本当はこのバーバラ村田を見た後、東京に戻るつもりだったのだけれど、ナイトパフォーマンスのときにバーバラ村田が踊る「かたわれ」を見ないで帰るのはいかにももったいない感じがしてきた。ナイトパフォーマンスを見ると、東京に戻るのが終電ぎりぎりになってしまう。結局、「かたわれ」を見てから帰ることに決めた。

札の辻ではバーバラ村田の「月と踊り子」のあとは、ダメじゃん小出のコメディを同じ場所で見た。ベテランの芸人だが私が見るのは今回が初めて。勢いのある、そしてちょっと毒を含んだ話芸が素晴らしい。観客数人を巻きこんだパフォーマンスは、観客ののりもよくて大成功だった。今回の静岡大道芸で一番笑った。

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ダメじゃん小出のあとは、うどんの夕食をはやめにとって、駿府公園にまた戻り、バーバラ村田のナイトパフォーマンスの開始を待った。バーバラ村田の出番の前は、デビッド・ラムゼイのマジックを中心とした喜劇的なパフォーマンスを見る。この人もベテラン芸人だが、私が見るのは今回はじめて。バラエティ豊かな楽しいショーだった。そしてバーバラ村田の「かたわれ」である。ラムゼイのショーの後半に雨が降って、バーバラ登場のときもまだ小雨が残っていた。またラムゼイのショーの最後はシャボン玉をつかったものだったので、演技場を区切る黒いシートはスタッフが掃除をしたもののドロドロの状態だった。私はバーバラ村田のパフォーマンス開始前に最前列に移動することができた。

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f:id:camin:20131103191837j:plainこの小雨の夜のなかでの「かたわれ」は絶品だった。最後にバーバラ村田の「かたわれ」を見ることができて、思い残すことはない。ああいう作品が大道芸の枠組みで上演されるのは驚嘆すべきことだ。陰鬱で、神秘的で、いびつな官能性に満ちた仮面舞踊による詩劇だ。子供の観客は下向いてしまうんだけど。SPACのパフォーマンスやバーバラ村田の「かたわれ」は、大道芸ということでは異色で場違いな感じがあるかもしれない。しかしこうした芸術性の高い演目を大道芸静岡ワールドカップは受け入れていることは、このイベントの奥行きを増し、さらに意義深いものにしているように私は思う。素晴らしい「かたわれ」を最後に堪能することができて、静岡で見たいものは全て見た感じ。本当に静岡は素晴らしい。大きな満足感を抱き、鈍行列車に乗って東京に戻った。