閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ジ、エクストリーム、スキヤキ(2013)

 

 五反田団の前田司郎の監督・脚本作品ということで見に行った。五反田団の演劇の雰囲気がそのまま映画に移行している。肩の力が抜けた脱力系の雰囲気。登場人物の会話はゆるゆるに弛緩していて緊張感がない。前田司郎のこのセンスは私は大好きだ。しかし彼の演劇作品を続けて観ると、その斜に構えた、薄笑いを浮かべながら「世の中のこと、わかってますよ」という姿勢がいやらしく感じられたりもして、続けて見に行く時期と見に行かない時期に分かれる。シニシズムの加減はなかなか難しい。今回の映画は私にとってはちょうどいい塩梅だった。

 いたたまれない時間の空白を単に埋めるためだけのような内容のない会話のやりとりが延々続く。反射的な埋め草だけで成立しているような会話である。そのすれ違いの会話が作り出すリズムが笑いになっている。4人の登場人物のあいだには、互いにメッセージを伝え合うことができる言葉はない。しかしそのかみ合わない空虚な言葉のやりとりの向こう側に、彼らが抱えてる曖昧な思い、もどかしさ、不安、傷口は感じ取ることができる。痛々しく、ダメな人たち。でもこんな具合に生きていけたらいいな、とも思う。

 窪塚洋介がとてもいい感じ。市川実日子のしかめ面の不細工顔もいい。