閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

第四五回文楽鑑賞教室『団子売』「文楽の魅力」『菅原伝授手習鑑』

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2013/2184.html?lan=j

  • 『団子売』「解説:文楽の魅力」『菅原伝授手習鑑』寺入りの段、寺子屋の段

 国立劇場小劇場の文楽鑑賞教室に行ってきた。11時の回に行ったけれど、学生は少なくて大部分は一般の客のようだった。 

 鑑賞教室は教育プログラムなので公演の値段も安く、パンフも無料なのがありがたい。『団子売』は15分ほどの演目。団子売夫婦の明るく、ひょうきんな舞踊劇。 

文楽の魅力」は前半は大夫と三味線による解説。大夫の声や三味線の音色の変化によって感情表現をどのように行うのかを、いくつかの例ととともに説明する。三味線音楽はきわめて描写的であり、大夫の語りの内容と緊密に結びついているものであることがよくわかった。後半は人形遣いによる説明。三人遣いの動きの連係のシステムについては、以前大阪で見た文楽鑑賞教室での実演説明も見たことがあったけれど、精妙な熟練の技であることがわかる。人形の動きは義太夫節に繰られているわけで、文楽の上演が演者間の緊密な連携と緊張感の上で成り立っていることがよくわかった。 

 

 休憩を挟んで後半は『菅原伝授手習鑑』より「寺子屋」。歌舞伎と文楽でこれまで数度見たことがあるが、主君への忠義ゆえに我が子を犠牲にする話は、そういう時代の話だから仕方ないとは思いつつも、その倒錯した倫理感には違和感を覚えざるを得ない。とりわけ他人から預かった子供を主君への忠義ゆえに差し出そうという寺子屋夫妻は許し難い人間のくずであるように思う。主君の偉さ、ありがたさというのが、根本的に私にはわからない。結局これは支配者のための弱者抑圧の哲学ではないかという気がしてしまう。我が身のみならず、我が子や家族も犠牲にしてしまう忠臣たちの葛藤は、あまりにもリアリティが乏しいように思え、説得力を感じない。 と思いながらも、お芝居としては眠ることなく、退屈することもなく、見通すことができた。