閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

サンヘドリン(灰野敬二/ナスノミツル/吉田達也)@秋葉原Club Goodman

 カナダ人演出家のラプリーズさんと秋葉原のライブハウスにサンヘドリンのライブを聞きに行った。ラプリーズさんは大友良英の大ファンで、カナダのテレビ局で大友良英のドキュメンタリーを撮ったりもしたそうだ。私は大友良英の音楽がどんなものか聞いたことがないのだけれど、彼から話を聞いているうちにプログレ・ノイズ系の音楽が彼の好みであることがわかってきた。そこで頭に浮かんだのはドラマーの吉田達也だった。私は数年前に吉田達也の熱狂的なファンである学生から、彼の編集した吉田達也ベスト盤を聞くようとに渡され、そのうちのいくつかは愛聴していた。

 ラプリーズさんに「吉田達也を知っているか?」と聞くと、「もちろんだ。モントリオールで彼のライブを聞いたこともある」とのこと。「12/18に彼のユニットのひとつ、サンヘドリンというバンドのライブがあるけれど、興味あるか?」「興味あるどころじゃない。絶対に行く!」ということだったので、私も付き合ってサンヘドリンのライブを聞きに行くことにした。サンヘドリンの音楽が、学生が編集したCDには含まれていなかったので、私も聞くのはこのライブが初めてだった。 

 サンヘドリンは3人編成のバンドだ。ドラムの吉田達也、ベースのナスノミツル、ギターの灰野敬二ナスノミツル灰野敬二も、この手の音楽に疎い私は知らないミュージシャンだったが、アヴァンギャルド音楽の世界では非常によく知られた人のようだ。 

 音楽のジャンルは予想していた通り。ハードロックっぽいのりの、ノイズをがんがん響かせる即興演奏なのだけれど、その破壊的な大音量は強烈だった。音が分厚く、豊かだ。音の暴力に振り回される。前半のセットは、一時間ノンストップの即興演奏。アンフォルメルで攻撃的な大音響を一時間近く聞かせるのだからやはり大したものだと思う。間に20分ほど休憩があって、休憩後は45分連続の演奏と10分のアンコール。 

 前半はあまりの音のどう猛さに、こちらの耳と頭がおかしくなりそうな気がしたけれど、後半になるとだんだん馴染んできて、大音量ノイズの氾濫を楽しんで聞けるようになった。演奏終了後は音楽の余韻が強烈すぎて笑ってしまう。ヘロヘロになった。しかしこの聴覚が麻痺してしまうような音にひたる体験は中毒性があるように感じられる。 とにかく感覚を激しく揺さぶれられる創造的破壊の凄い2時間だった。このライブのあとも数日、サンヘドリン・ショックが持続していた。おそらくまた聞きに行だろう。精神がばらばらに解体されてしまうようなエネルギーを持つ大音響のノイズは、その徹底ぶりゆえに今、ここで生きているという感覚を強烈に与えてくれる。優れて演劇的な体験だ。