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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

elePHANTMoon『成れの果て』

演劇

http://www.elephant-moon.com/tokusetu/nare.html 

  • 作・演出:マキタカズオミ
  • 舞台監督:西山みのり
  • 舞台美術:福田暢秀(F.A.T. STUDIO)
  • 照明:若林恒美
  • 音響:星野大輔(サウンドウィーズ)
  • チラシイラスト:駕籠真太郎
  • 出演:永山智啓、江原大介、菊地奈緒(以上、elePHANTMoon);石井舞、亀山浩史(うさぎストライプ)、川村紗也、後藤ユウミ、芝博文、寺井義貴(ブルドッキングヘッドロック)、山田佳奈(□字ック)
  • 劇場:こまばアゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆☆★

  舞台美術がすばらしい。古ぼけた和風の家屋の10畳の居間である。調度品、ふすまや扉、壁の質感などが超リアルに再現されている。この陰鬱で重苦しい居間は、劇そのものの優れた象徴にもなっている。 

 elePHANTMoonのこの作品はポツドールを連想させる。しかしポツドールの登場人物のふるまいがアッパー系ののりを感じさせるのに対し、elePHANTMoonのこの作品はダウナー系の雰囲気だ。 


 10人の男女が登場する恋愛の物語だ。しかし登場人物はいずれもすさんだ雰囲気を持っている。思いどおりにはならない恋愛に振り回され、疲弊し、それによって人格に歪みが生じているかのようだ。恋愛の甘美な幻想はこの芝居では一切提示されない。ここで展開するのは、散文的で陰惨な愛の情景である。その愛のかたちはあまりに露悪的で無残ではあるけれど、われわれが隠蔽している、あるいは見ないふりをしている愛への欺瞞が含まれていることは否定できない。この作品が暴き出すアンチ・ロマンチックな愛のリアリティは、われわれが抱える疚しさを刺激する。 

 見た目のぱっとしない女優をそのままブス役として、彼女が本当に持っているのかもしれないコンプレックスをグロテスクに強調したかたちで舞台上に提示する、という残酷さに戦慄する。これはポツドールでもやっていることではあるが、作家・演出家への信頼がよほど確固たるものでないと、こういう役柄を引き受けることはできないように私は思う。 

 事態を徐々に明らかにしていく、サスペンスのある劇作作法はとても優れている。 
核になるのは、地味でさえない姉と勝ち気で可愛らしい妹のあいだのおぞましい相剋の物語である。しかし姉妹が互いに行った復讐がどのようなものであったのかが明らかになるのは終盤になってからだ。 

 また演技演出も美術同様に精密で丁寧だ。これもポツドールを連想させる。表情や動きのディテイルに配慮がある。各人物の設定もよく練られていて、各人物のいびつさに説得力があった。