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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

恋の渦(2013)

恋の渦(2013)

  • 上映時間:140分
  • 製作国:日本
  • 初公開年月:2013/03/30
  • 監督: 大根仁
  • 原作: 三浦大輔
  • 脚本: 三浦大輔
  • 撮影: 大根仁大関泰幸、高木風太
  • 編集: 大根仁大関泰幸
  • 制作: 山本政志
  • 録音: 岩倉雅之、光地拓郎
  • 出演: 新倉健太、若井尚子、柴田千紘、後藤ユウミ、松澤匠、國武綾、圓谷健太、澤村大輔
  • 映画館:キネカ大森
  • 評価:☆☆☆☆

  昨年夏に見逃していた映画。元になった舞台は、2006年の新宿Theatre/TOPSで見ていた。http://otium.hateblo.jp/entry/20061205/1165333881 この舞台版では、冒頭部で仲間からひどい虐めを受ける醜男役は古澤裕介、ブス役は白神未央だった。ポツドールの芝居で「ブス役」を果敢にも演じ続けていた白神未央は、ああ、2年ほど前に心臓発作で急死してしまったのだ。まだ二十代後半か三〇代前半だったはずだ。

 6年以上前に見た舞台だったがよく覚えている。映画版は舞台版を素直にそのまま映画化したような感じだ。舞台版は二層構造で複数の部屋を設置し、各部屋を視覚的に同時展開させていた創意が印象に残っている。携帯電話を展開の小道具として使う劇作術は極めて技巧的かつ遊戯的で、三浦大輔の才気が存分に発揮された舞台だった。仲間内のカーストの残酷さがなまなましく表現された舞台だった。登場する人物はみな浅はかで、エゴイスティックで、己の欲望のままにふるまうことを躊躇わない若者たちだ。

 ポツドールの演劇を見て爽快さを感じるのは、われわれ自身が日常のなかで隠蔽している人間の欲望の浅ましさ、醜さが、ポツドールの演劇では露悪的に提示されているからだ。われわれは自身のなかに、そして他者の言動のなかに、ときおりどす黒い感情や欲望を感じつつも、それをごまかし、気付かないふりをすることで、日々の生活を送っている。おそらくこうした欺瞞のない、生々しい真実が暴露された生活の残酷さに、われわれの精神は耐えることができないだろう。しかしその欺瞞の蓄積のなかに息苦しさも感じている。ポツドールの露悪性はわれわれの日常のこうした息苦しさに風穴を空けてくれる。あらゆる人間関係がそうなのだが、恋愛関係もパワーゲームだ。惚れられた者が惚れた者の優位に立ち、権力を握る。もちろんこの関係はちょっとしたことがきっかけで劇的な逆転をすることもある。三浦大輔は見た目もいいし、作家・演出家としての才能にもあふれている。彼は人間・恋愛関係においてはほとんど常に優位にあったのだろう。そしてクールに回りの人間のふるまいを観察していたのだ。

 エゴイスティックな人間の心理の動きをリアルに露悪的に劇行為を通じて暴き出すという点では、ポツドールの演劇は18世紀フランスの劇作家、マリヴォーの演劇を連想させるところもある。

 

 出演したキャストはおおむね一般的には無名の小劇場系の俳優が多かったようだ。白神未央が演じたブス役は、映画では後藤ユウミが演じていたが、実際には後藤ユウミはぶさいくな女性ではない。映画のなかでは厚化粧メイク彼女の顔に見覚えがあるような気がしたのだが、帰宅してから調べてみると彼女は先週アゴラで見たばかりのelePHANTMoon『成れの果て』に彼女は出演していたのだった。