閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

宇宙人ポール(2010)

宇宙人ポール(2010)PAUL

  一ヶ月ほど前に子供二人にペッグ/フロストのコンビの傑作『ホット・ファズ』のDVDを見せたら大好評で、それ以来、娘はサイモン・ペッグの大ファンになってしまった。私は『ホット・ファズ』はとても好きな映画なのだけれど、『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『宇宙人ポール』は以前見たときは、『ホット・ファズ』ほどは楽しめなかった。自分にこれらの映画の元ネタとなった娯楽映画の教養と愛が欠けているのが原因だと思う。

 娘はとにかく彼らが出ている全作品を見てみたいとのことで、今回は2010年にロードショー公開された『宇宙人ポール』を借りて一緒に見た。私はこれを早稲田松竹での再映のときに見ていたた。

 『宇宙人ポール』はスピルバーグの『未知との遭遇』と『E.T.』へのオマージュになっている。『未知との遭遇』は小学4-5年生の頃に映画館で見て衝撃を受け、その後しばらくは巨大UFOの落書きばかりしていたのだけれど、結局、私は熱心なSF映画ファンにはならなかった。『E.T』も見ていない。『宇宙人ポール』はSF映画オタクの話なので、スピルバーグのこの二つの作品以外にも、おそらく相当な数の有名SF映画のパロディが入っているに違いない。それらの元ネタを知らないとこの映画の真価はわからないように思うのだけど、DVDで見た今回は、前回劇場で見たよりもずっと作品を楽しんで見ることができた。パロディについてはほとんど典拠がわからないのだけれど、ペッグとフロスト自身も楽しんだであろうアメリカSF娯楽映画への無邪気な敬意とアメリカ中西部の田舎風俗に対するイギリス都会人のカルチャーショックが、ドタバタ、カーチェイス、社会風刺など定型的な笑いによって、見事に表現されているよくできた喜劇映画だと思った。少年ぽさが抜けないバカ男の友情物語としてもいい作品だ。少年っぽい中年の間抜けさを自虐的に描きながらも、友情のある理想的なかたちを提示している。ペッグとフロストは実際にこんな関係なのだろうかと想像してしまう。男二人でもホモ仲というわけではないというのが何度も映画のなかで繰り返される。フロストが演じた男が、相棒に宇宙人の友人とキリスト教原理主義者の恋人ができたことに嫉妬するのを口にする場面がとてもいい。

 娘は4月に公開されるペッグ/フロストの新作、『ワールズ・エンド』が楽しみでならないらしい。私も一緒に見に行くのが楽しみだ。

 http://www.worldsend-movie.jp/