閑人手帖

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それでも夜は明ける(2013)

それでも夜は明ける(2013) 12 YEARS A SLAVE

  19世紀半ば、ニューヨークで自由黒人の音楽家として、家族とともに幸せな生活を送っていたソロモンは、ある日、興行師に騙され奴隷として南部に売り飛ばされてしまう。南部でプラットという名前を与えられた彼は、12年間にわたって苛酷な奴隷生活を強いられる。彼の主人の家屋建設のために雇われた流れ者の大工に北部との連絡をい依頼することで、彼は奴隷生活から解放され、家族と再会することができた。

 

 黒人奴隷所有者によるむち打ちなどの拷問の場面が、無残で見ていられない。おそらく現実にはもっとひどいことがいたるところで行われていたのだろう。『それでも夜は明ける』という邦題だが、ソロモン/プラットとは異なり、奴隷生活のまま苦難の生涯を終えた大半の黒人奴隷のことを思ってしまう。夜が明けないまま、絶望の中で死んでしまった人間のほうがはるかに多いに違いない。そして悪逆非道のふるまいを罰せられることなく、人生を死ぬまで謳歌した悪人どもも多かっただろう。

 われわれ日本人にとっては奴隷制は異国の昔の出来事である。しかし搾取者の横暴と傲慢、それに連帯して戦うことができない被搾取者の奴隷根性は、いまもなおわれわれの社会に存続している。