読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

河村企画『スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア』

http://www.seinendan.org/link/2014/03/3293

作・演出:山田百次(劇団野の上) 
照明:井坂浩 
出演:大竹直、安倍健太郎、鈴木智香子、斉藤祐一、河村竜也、赤刎千久子、山田百次、木引優子 
上演時間:85分 
劇場:アトリエ春風舎 
評価:☆☆☆☆★ 
------------- 
とある中学校の複式学級クラスが舞台。季節は卒業式の間際である。 
優れた寓意風刺劇だった。閉鎖的な環境のなかで、ちょっとした誘導を与えることで集団ヒステリーの状態に陥り、成員の奇矯な行動がエスカレートしていくさまを繰り返し抱く。その極端な行き方は新興宗教の団体や自己啓発セミナーをまず連想するが、われわれの日常のなかのいろんな局面でこうした事態は起こりうるように思う。私は今、組合活動を行っているけれど、組合首脳部の雰囲気もかなり似ている。被害者意識とコンプレックスがもたらす非現実的な想像によって、ばかばかしい陰謀論が主張され、それに振り回されることがちょくちょくあるからだ。しかし組織はこうした狂信的なエネルギーを持つ急進的な層によって、組織たらしめられているところもあることも否定できない。 
とにかく前半は何度も爆笑した。異常な人格の人物たち、カリカチュアされた狂騒ぶりが可笑しくてならない。 
私が大好きな青年団女優、木引優子は極左の教員役。童顔で胸も小さいロリータ女優なのだが、ものすごく権力的に、サディスティックにふるまう。小さくて白くて酷薄で悪魔のように可愛らしい。やはり大好き。教室の学生たちを先導するオカルト学生を演じた大竹直の演技も素晴らしい。 
最後の風刺的モラルはちょっと当たり前のところに落ち着きすぎて若干がっかりしたが。しかし幕切れの処理は非常によかった。とにかく非常に優れた脚本だ。 
作・演出の山田百次は劇団野の上の主宰でもある。彼の作品は今後、追っかけていきたい。 

今夜の公演は、アフター・パフォーマンスとして、山田百次独り芝居「或るめぐらの話」も上演された。上演時間は25分ほど。原作は津軽弁の詩人、高木恭造という人。津軽弁の盲人の独り語り。山田百次は弘前劇場出身の津軽人だ。これはこの前に上演された『スマコニュ』とは全く趣の異なる、重々しく、ユーモラスでもある、語り芝居だった。山田百次は黒いマントと帽子をかぶった物乞い放浪者といったいでたちで現れる。メチルアルコールが原因で失明し、絶望のなかにあった盲人男が、とある僧侶との出会いによって生きる喜びを再び見出す、というある意味、典型的な教訓説話のような話だ。 
早口の津軽弁は意味を取るのがけっこう大変だ。しかしその音の洪水のなかに引きずり込まれ、意味が拾い上げてしまわざるをえないような、圧倒的な勢いがその語り口にはあった。これもまた凄い芝居を見てしまった。正統的な芸能の系譜にある現代の語り芝居。