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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

みつわ会「弥五郎源七」「一周忌」

第十七回みつわ会公演 久保田万太郎作品 其の二十四

  • 演出:大場正昭
  • 美術:藤森條次(弥五郎源七)、中嶋八郎(一周忌)
  • 照明:熊田勝博
  • 効果:秦大介
  • 舞台監督:藤森條次
  • 出演:『弥五郎源七』菅野菜保之、児玉真二、小林功、世古陽丸、佐堂克実、青柳嘉伊子、千葉勇佑、村岡ミヨ、諸岡貴人;『一周忌』瀬戸摩純、大原真理子、仲恭司、冷泉公裕
  • 劇場:新馬場 六行会ホール
  • 評価:☆☆☆☆

  『弥五郎源七』は河竹黙阿弥の『髪結新三』に登場するヤクザの親分。黙阿弥の作品では新三に恥をかかされたこの親分は、『髪結新三』の最後の場で新三を襲い、彼を叩き切る。久保田万太郎の『弥五郎源七』は、源七からこの事件を描く。舞台は黒幕黒背景で最初から最後まで暗く、陰鬱。雨がずっと降っている。弥五郎源七は酒に溺れ、自暴自棄になっているのを、子分にたしなめられる。しかし彼の鬱屈した思いは収まらない。雨の夜に通りに出て、自分に恥をかかせた新三を叩き切って逃げる。逃げた先は人のいい老夫婦の居酒屋。源七はこの店のなじみだ。血まみれで尋常でない様子の源七を、この老夫婦は寛大に迎える。しかし人を切った興奮と疑心暗鬼のなかにあった源七は、この罪のない善良な老夫婦も斬り殺してしまう。家に戻り、自分の行いの卑劣さを激しく悔いるのだが、どうしようもない。捕吏が彼を捕らえにやってくるが、彼はすきをみてまた逃げ出す。

 外道の道を転がり落ちていく源七の絶望を、静かに描き出す秀作だった。暗闇のなか、ぼんやりと人物を照らすオレンジの照明がいい。演じる俳優たちの渋い佇まいも、作品のトーンとしっくり馴染んでいた。

 『一周忌』は関東大震災の4、5年後の下町の家屋の一室が舞台。若くて美しい未亡人とその周囲の人々のやりとりを明るい乾いた調子で描写した喜劇だった。未亡人を演じた瀬戸摩純の品のある風情と優雅な動きが美しい。姉と話ながら着物を外出着に着替える場面がよかった。